劇場に入った時に、もう立ち見状態だったんですが、それがかえって良くて、後ろから客席を見渡せたんですよ。踊り子さんが脚を広げた瞬間に、すごくわかりやすく身を乗り出す人々がいて(笑)。その気持ちはわかるんですが、身を乗り出すことへの気恥ずかしさってあるんじゃないですか。みんなそれがなくなっちゃうみたいで、「かぶりつき」と言って、みんな最前列に座りたがるんですよ。朝から並んでかぶりつきをキープして、ほとんど一日そこにいるんですよ。だから踊り子さんが自分の方に来ると、回転と一緒に自分も動いているんです(笑)。

本表紙中村うさぎ著

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ストリップ劇場の客

清水ひとみ清水ひとみ
 渋谷道頓堀劇場伝説の「オナニークイン」ストッパー
 スリッパ―になって自分の殻が破れた
 1962年生まれ。渋谷道頓堀劇場ストリップス演出家、女優。
 不動産会社OLを経て1985年に渋谷の道頓堀劇場のストリップ劇団かぐや姫に参加。「竹取物語」「雪女」などの童話、名作シリーズで”オナニークイン”として人気急上昇。1988年に舞台「曾根崎心中」で女優デビュー。その後も映画やテレビでも活躍。
 1999年に札幌道頓堀劇場社長に就任。2000年同劇場「曾根崎心中」を最後にストリッパーを引退。2001年に渋谷道頓堀劇場復活と同時にストリップ演出家に就任。

●ストリップ劇場の客

うさぎ◆渋谷道頓堀劇場でストリップを拝見させてしました。面白かったですよ。踊り子さんにすごくアイドル系の子がいる事に驚きました。
ひとみ♠イメージとして暗くてドロドロだと思ってらっしゃいませんでした?
うさぎ◆もっとしっとりとして隠微な感じかと思ってたんですよ。それが、コスチュームからルックスからアイドル系で、すごいなと思ったんですよ。
ひとみ♠けっこう健康的で明るい世界になっていますよね。
うさぎ◆ええ。あの女の子たちは自分から応募してくるんですか?
ひとみ♠アイドル系の子たちはほとんどがゲストです。他の劇場から来ている人たちもいて、みんな旅回りをしいるんです。うちの専属は十五名いるんですけど、その子たちは実際にショーを見て、「自分
もやりたいな」ということで入って来た人たちです。
うさぎ◆ショーにストーリー性を盛り込むのは、けっこう珍しいんですか?
ひとみ♠ええ。うちだけがオリジナルでやっているんですよ。ずっと出てきて踊って脱いでベッド(全裸で回り舞台で横になるポーズ)してだと面白くないから、目先の変わったものをやることにしてまして。
うさぎ◆いつごろからですか?
ひとみ♠私はデビューした時から、童話をストリップにしたものをやっていたんです。たとえば、「竹取物語」とか「雪女」とか。そのころからそういうスタイルが根付いて、私が演出をやり始めたのが札幌道頓堀劇場ができた三年前からなんですが、そこから本格的にショーを始めるようになって。私は「ストリップ・ミュージカル」と言っています。
うさぎ◆お客さんの評判はどうですか?
ひとみ♠いいですね。うちには女性客がけっこういたりするんですが、とくに女性客に「楽しくて面白い」って評判はいいんです。
うさぎ◆女性客が増えると男性客が嫌がるということはないんですか?
ひとみ♠うちに関しては大丈夫ですね。女性客が五割を占めてしまうと男性客が見づらいでしょうが、そこまではいっていないので。
うさぎ◆やっぱりショー的な要素やミュージカル的な要素を楽しみにしていらっしゃるお客さんと・・・・・。
ひとみ♠アソコだけを見にくる人もいるし。
うさぎ◆違いますよね。
ひとみ♠ぜんぜん違いますね。
うさぎ◆私たちが劇場に入った時に、もう立ち見状態だったんですが、それがかえって良くて、後ろから客席を見渡せたんですよ。踊り子さんが脚を広げた瞬間に、すごくわかりやすく身を乗り出す人々がいて(笑)。その気持ちはわかるんですが、身を乗り出すことへの気恥ずかしさってあるんじゃないですか。
ひとみ♠小屋に入ると、みんなそれがなくなっちゃうみたいで、「かぶりつき」と言って、みんな最前列に座りたがるんですよ。朝から並んでかぶりつきをキープして、ほとんど一日そこにいるんですよ。だから踊り子さんが自分の方に来ると、回転と一緒に自分も動いているんです(笑)。
うさぎ◆動いていました!(笑) ウェーブ感がありましたよ。
ひとみ♠あれは面白いですよね、後ろから見ると。
うさぎ◆可愛ですよね。でも、失礼なお客さんもいますよね。自分の贔屓の踊り子さんでないと見なくて、目を反らしていることをアピールするくらいで。ああいう視線にさらされるというか、拒否の視線っていうのは傷つくことだと思うんですよ。
ひとみ♠そうですよね、「さっきのベッド、よくなかったね」ってお客さんに言われて、楽屋に帰ってきて泣きながらご飯を食べたりしてる子もいます。必ずご飯を食べながら泣くんですよ(笑)。
うさぎ◆そうなるんだ(笑)。それは、いつお客さんから言われるんですか?
ひとみ♠うちの場合、握手会があるので。
うさぎ◆それで「次は頑張ろう」ってことにもなるわけですね。
ひとみ♠女の子によっては、バネにして頑張る人もいるし、そういう一言ひとことがどんどん自信喪失につながって辞めていく人もいます。
うさぎ◆そうかぁ。お客さんはお客さんで、自分が踊り子さんを育てているような感じがあるんですよね。
ひとみ♠そうですね。歌手でも何でもそうですけど、できあがっているスゴい芸ではなくて、新人の頃から応援していくというのが好きみたいですね。
うさぎ◆それは分かるような気がします。
 私はホストクラブにハマったわけですが、初めは面白いのかどうかよくわからなかったんですよ。十歳も十五歳も年下の男の子と話していても得るものなんて何もないんですが、夜になると他に遊びに行くところがないんです。私は夜中に遊ぶ生活をしているもので、ホストクラブに行ったわけです。そのうちに、お金を使えば使うほど、自分が指名した男の子のランクが上がっていくのが面白くなってきちゃって。だから、最初からナンバーワンじゃないとダメなんですよ。お客さんの中には、最初からナンバーワン指名の人が結構いるんです。

それは、もうスターになっている人にはキャーって行く人なんですが、私は三十人くらいいるうちの十五、十六位くらいを狙ってですね。あまり下だと、それはそれで本人やる気がなかったりもするので、応援しがいがなくて。それにお金も大変だしね(笑)。

だから、上昇志向はあって頑張っているけどうまくいかないといっていう、真ん中くらいにいる子がいいんです。お金を使ってそのこの地位が上がっていくと、店の中での地位も変わるし、周りの扱いも変わるのが、如実に見えてくるんですよ。その子自身のプライドも育っていって、けっこうオーラが出るんですよ。

ひとみ♠踊り子も、まさしくそうですよ。お客さんに応援されて自信がついてくると、どんどん綺麗になります。
うさぎ◆やっぱりそうですか。清水さんは、お客さんに育てられたという意識はありますか? 
ひとみ♠それが百%に近いですね。朝一番に来てくれる、おじいちゃんのお客さんに。
うさぎ◆おじいちゃん! (笑)
ひとみ♠道玄坂は登るのかけっこう大変なんだけど、そこをヨボヨボと登って(笑)、朝からずっと行列をつくって待ってるんですよ。おじいちゃんのいいところは、ずっとニコニコしながら見てくれるところ。母性本能をくすぐられるというか、あれを見てしまうと、辞められないんですよ。
うさぎ◆いいですねえ。でも、イヤな客っていうのもいますよね? 典型的なのは、どういう客ですか?
ひとみ♠騒ぐ客。ヤジを飛ばす人ですね。あと、若い男の子が友達同士できて、照れちゃって恥ずかしくてケラケラ笑っちゃうんですよ。踊り子さんが真剣にやっているのに、笑われるのはね。
うさぎ◆わかります。そういうのって、お客さんでも初心者は仕方ないことでしょうかね?
ひとみ♠「若いからしょうがないのよ」って女の子たちを慰めますけど、ショックはショックですよね。
うさぎ◆文句を言われるより笑われる方がイヤですよね。ことが真剣にやっているのに。真剣に見ている人たちもいるんだから、失礼ですよね。

●ハマりやすい体質

ひとみ♠私もけっこうハマりやすいタイプなので、ホストクラブには近づかないことにしているんです。
うさぎ◆「衝動買いの癖があった時期がある」と、他の対談でお話しになってましたよね?
ひとみ♠ええ、ストレスを衝動買いで発散してたんです。あと、お酒。アルコール依存症だったりして、けっこう依存体質なんですよ。何でもハマっちゃいそうなんです。
うさぎ◆男にはハマらない?
ひとみ♠ハマりたいんですけど、なかなかそれだけのイイ男がいなくて。ホストクラブへは二回くらい仕事で行って。何だか知らないけど、メモを握らされたんですよ。
うさぎ◆名刺じゃなくて?
ひとみ♠紙切れ。でも、人前で見せてはいけないような雰囲気があったので、ドキトギしちゃってトイレに行った時に見たら、電話番語が書いてあったので、「なんだ、営業じゃん」と思って。
うさぎ◆ワハハ。それは営業ですね、間違いないや。
ひとみ♠営業に騙されちゃイカン、と思って。
――昔の話ですか?
ひとみ♠そうですね、十五、六年前かな。
――そういう時代もあったんでしようね。当時は名刺なんて持ってなかったと思います。いまのホストは名刺を渡しますからね。
うさぎ◆でも、メモのほうが隠微でいいじゃないですか。それで、ホストにハマらず?
ひとみ♠ハマらず。
うさぎ◆買い物は、何を買うんですか?
ひとみ♠洋服とか。ブランド品というわけではないんですが。
うさぎ◆踊り子さんとしてオナニークインといわれて、その後の緊縛のほうに?
ひとみ♠写真集を一回だけやったんです。
うさぎ◆舞台で緊縛は?
ひとみ♠やりました。それも一回だけ。だから、そっちのプロではないんです。
 新しい写真集を出すときに、それまでも何冊か写真集を出していたし、ストリップでさんざん裸をさらししておいて今更普通の写真集でもないでしょうと思って、どうせ出すならスゴいものを出したいと思って。そしたら、いきすぎてしまいましてね。
うさぎ◆まぁ。
ひとみ♠外で吊られたり、えびぞったり、逆さにされたり、冷たい水をいっぱいかけられたり、いろんなことをして。で、終わってタバコを吸おうと思ったら、手が上がらないんですよ。
うさぎ◆鬱血しちゃって?
ひとみ♠神経が麻痺して。それで、口のほうを手に近づけてタバコを吸って。すぐに治ると思ってたら、結局、三ヶ月そのまま。
うさぎ◆えつ。
ひとみ♠医者に行ったんですが、「治らなかったら一生治りません」って言われて。
うさぎ◆ええーっ! 緊縛で、そんな・・・・・。風吹あんなさんも、緊縛で麻痺したとおっしゃってました。緊縛って、命がけなんですね。
ひとみ♠やり馴れてないとダメですね。素人が限度をわきまえずに、いきなりガンガンやってししまったら危ないです。
うさぎ◆縛るほうも、相手があまり経験がなければ、合わせてくれるのでは?
ひとみ♠それがね、「もっとやって、もっとやって」って言っちゃって(笑)。
うさぎ◆プロ根性ですね。吊されるのって、どのくらい続くんですか?
ひとみ♠逆さ吊りは、一分間ももたないです。だから、しょっちゅう、男の人何人かで持ち上げてもらって。でも、最後のほうはそれ何処じゃなくなって、相当な間、吊るされました。
うさぎ◆屋外だったんですよね?
ひとみ♠ビルの屋上で。
うさぎ◆病みつきになったということはなかったですか?
ひとみ♠それはなかったけど、日常から離れた何か、スゴいことは惹かれますね。でも、痛いのはイヤ。
うさぎ◆やっぱりイヤですか。気持ちよくならない?
ひとみ♠ならない(笑)。
うさぎ◆私は縛られたことがなくて、縛られる人の気持ちが分からないので、一回縛られてみたらわかるかなって。誰でも思うじゃないですか。
ひとみ♠ええ。昔、『屋根裏の散歩者』という映画を撮った時に、上半身だけ亀甲縛りをしてたんです。休憩時間になって、車の中でカレーライスを食べて。
うさぎ◆えっ、亀甲縛りのまま?
ひとみ♠そう。「取りましょうか?」って言われたんですけど、「いいです、このままで」って、カレーを食べてて。なかなかね、拘束されている感じが、気持ちが安定するというか。
うさぎ◆えつ、そうなんですか?
――それは、着物を着ている時に背筋が伸びるみたいな感じですか?
ひとみ♠違う。なんかね、安心感があるの。
うさぎ◆どういう安心感ですか?
ひとみ♠自由っていうのは、なんでもできちゃう代わりに、どこか不安なものですよね。だけど、一本縄があって、拘束されているという枷があるだけで、なんか安心感があるんです。もしかしたら、これがSMの人の基本なのかな、と思って。
うさぎ◆はぁ。実際に体を縛られるかどうかは別にして、束縛というものが人に安心感を与えるというのは、わかりますね。
ひとみ♠家庭だったり男だったり。
うさぎ◆会社に属しているという安心感だったり。それは、クビキが増えることになるんだけど、そのぶん地に足がつくというか、自分が属するものがちゃんとあるというのは、アイデンティティの安定につながるから、それが象徴的に、縛られることでカレー食べても安心、みたいになるんでしょうかね。
ひとみ♠ええ。いいなぁと思いました。
うさぎ◆そうですか。私はまた、体を縛られてるからカレーを飲み込みにくかったという話なのかと思ってたんですよ。意外性に満ちあふれる話だった(笑)。裸で縄が食い込んでいる状態ですよね?
ひとみ♠そうそう。軽く上衣は羽織ってましたけどね。
 ストリップでもSMショーはけっこうやるんですが、Mの踊り子さんは、劇場に入ってくる時に、どこか縛ってたり、縛っていなくてもベルトを一本、肌に直接して、その上に服を着てきたりしますよ。
うさぎ◆へえー、そうなんですか! SMプレイで、亀甲縛りをされたまま、その上に服を着て、「股に縄がくいこんだままコンビニ買い物してこい」「うーん、擦れる~」みたいなのは聞いたことがありますが、それは虐められてる感が気持ちいいのだと、「目の前のコンビニの店員は、私がこんなイヤらしく縛られて濡れて濡れてパンツも履いていないことに、気づいていないんだわ」っていうのが気持ちいいのかと思ったんですが、安心感みたいなものがあるわけですか。
ひとみ♠そうですね、ステージ上で縛られて解かれてから戻ってくるんですが、楽屋でもう一回、自分で縛り直してるんですよ。
うさぎ◆そうなんだ~(笑)。面白いな、SMって不思議ですよね。
ひとみ♠うん、不思議。うさぎさん、ハマるかも。
うさぎ◆えつ、私が?
ひとみ♠良さを知ったら、ホストの次はSM。
うさぎ◆講習会でも亀甲縛り。見せたくて仕方なくなって、自分が見せてそうだな(笑)。でも、ハマるかもしれないですよね。
 私がいろんなものにハマっているのは、自分の安定感というか――結局はお金を使いすぎて生活が安定していないんですが――生活が安定しなければしないほど、危機感と隣り合わせで、ある種の安心感があるのかもしれないです。SMだったらお金もかからなくて、家でできるし、いいかも。
ひとみ♠最初に著書を読ませていただいた時に、借金でどうにもならないというのを読んで、「これはストリップに口説こう」って真剣に思ったんですよ。で、巻末のプロフィルを見て、「四十四歳か、ダメだ」って(笑)。
うさぎ◆ワハハハ。熟女ストリップはあり得ないですか。
ひとみ♠あり得るとは思いますけど、ほんとうに真剣にお願いしにあがろうとかと思ったんですよ。これだけ借金があるなら、やってくれるかもしれないと思って。
うさぎ◆そうでしたか。
ひとみ♠一日いくら、です。
――踊り子さんをポロライドで撮るのはお客さんが別料金を払いますよね、あれは?
ひとみ♠あれは劇場のものです。
うさぎ◆そうですか、あれはチップみたいに本人に入るのかと思っていました。
ひとみ♠どうしてポロライドを売るかというと、ポロライドショーやってる子たちのギャラは、すごく高いんですよ。だからポラをいっぱい売らないと、次から仕事がないんです。ギャラばかり高くて。

●流されてストリップへ

ひとみ♠ストリップに自分から飛び込んでくる子って、なかなかいないので、だいたいスカウトマンにスカウトされて、AVをやり尽くしてからストリップに来るというのが多いです。
うさぎ◆順序として王道みたいなパターンがあるんですか?
ひとみ♠一流の子は、いきなりAVですね。昔はAVをやり尽くしてからストリップに来ましたけど、今はAVデビューする前なのに、AV女優としてストリップデビューしたり。
うさぎ◆私は、順序があるとしたら、ストリップが先かと思っていたんです。というのも、ストリップは見せてるまでしょ。触られたりしないし、基本的に本番はないわけですから、セックスを見られるということに抵抗がある人が、まずはストリップに入って、自分の体を見せる事に慣れていくのかな、と。人によってはそれで終わる人もいるだろうし、AVにいく人もいるのかな、って。なんだかAVのほうがハードなような気がして。
ひとみ♠そう思いますよね。ただ、純粋にストリップから入ると、AVはやりたがらないんですよ。「私は芸を売っているのに、なんで体を売らなきゃいけないのよ」って事になるんです。純粋なストリッパーは、AV女優をバカにしているところがあって。私も現役のときは、そういう考えでした。だけど世間では、いつの間にかAV女優がブランドになってしまって、AV女優自身もプライドを持つようになって。今は、AVと名前がつく子のほうが、ギャラが高いんです。悔しいくらい(笑)。

うさぎ◆清水さんは、どういうきっかけでこの世界に入ったんですか?
ひとみ♠私はマンションの販売をやっていたんです。ある日曜日、友達の友達から電話がかかって来て、「今すぐに渋谷の喫茶店に来てくれないか」と言われて。一度しか会ったことのない人なのに、なんで? と思ったんですが、流されてしまうタイプなので、仕方なく行ったんですよ。そしたらそこに、道頓堀劇場の社長さんをはじめ人がいっぱいいて、「女の子が一人、病気で倒れて穴があいた、芝居仕立てだから一人欠けるとどうにもならない、君が出てくれないと困る」と言われて。
うさぎ◆そんな自分勝手な(笑)。そんなこと言われたら困る、ですよね。
ひとみ♠ですよね。イヤなんですけど、イヤと言えなくて。
うさぎ◆なんでてすかー!(笑) なんでイヤと言えないんですか。何歳でしたか?
ひとみ♠サバよんでデビューしたんですが、実際は二十二歳だったかな。イヤと言えないまま、楽屋に連れていかれて、みんなに脱がされて衣装を着せられて化粧されて、ダダダッと連れていかれてポンッと押し出されて、舞台に上がったんです。
うさぎ◆なんだそりゃー(笑)。でも、練習もしていないのに、どうしてたんですか?
ひとみ♠櫛を渡されたんですが、「舞台に出っ張ったところがあるから、そこに行って、座って髪の毛をといていろ」と言われたんですよ。そしたら次の女の子が出てきていろいろやってくれるから、と。
うさぎ◆あっ、二人でね。よかった~。どうすればいいのかと。私がドキトギしちゃったよ(笑)。どうでした?
ひとみ♠いやもう、出た瞬間に私を見ているということにビックリしました。まさか見られると思って行ってないので。
うさぎ◆えっ、なんだと思ってたんですか?
ひとみ♠見られるのはわかってたけど、「見られているのだ」っていうのが、改めて意識されて。しかも大勢の人たちに。もう、裸見られるのも顔を見られるのも、どっちも同じくらい恥ずかしいので、裸がどうとかいうことも関係なく、真っ白でした。
うさぎ◆途中から「これは面白い」と思い始めたりしたんですか?
ひとみ♠いえ、その時は何も思わずに終わってしまって。それで、一回だけと言われたのに、結局女の子が見つからなくて、一日に四回やって。帰る時に「明日もまた来てね」って言われて。
うさぎ◆行ったんですか?
ひとみ♠次の日は月曜日で、会社に行かないといけなかったですね。だけど、会社にも疲れていたんです。売れないマンションだから、営業マンが歩いて売るんですよね。「日当たりが悪いわね」と言われて、「そのほうが畳が焼けなくていいんですよ」なんて言わなくちゃいけなくて。嘘をつきまくってる気がして、イヤでイヤで仕方なかったんです。だったら、会社に行くのは辞めよう、劇場に行こう、って。
うさぎ◆うーむ(笑)。はじめに断れなかったことといい、押しの強い性格ではないんですね。そういう人にマンションの営業というのは、辛いですね。「この人がこのマンションを買ってからどんな生活になろうと知ったことか、売れることが私の成績だ」くらい思ってないと、マンションなんて売れないですものね。だったら、お客さんが喜んでくれるストリップのほうが気が楽ですよね。
ひとみ♠そう。しかも、ストリップのほうが、何かありそうな気がしたんです。
うさぎ◆何か? 自分の人生が変わるようなこと?
ひとみ♠そう。もともと、営業の仕事も、自分に一番向いていないから選んだんです。
うさぎ◆えっ、どうしてー? 仕事を選ぶときは、向いている仕事を選ばないと、ストレスが溜まっちゃうじゃないですか。
ひとみ♠自分を変えたいと思って。自分の新しい部分を発見できるかな、って思ってたんです。
うさぎ◆あっ、そういう考え方をするタイプなんですね。私はそれがないですね。仕事を選ぶときは、得意なことを仕事にしたほうが、ストレスが溜まらないし、いい所まで行けるんじゃないかっていう、合理的な考え方をするんですよ。自分を変えたいというのは私も思うんですが、それと仕事選びが結びつかないんです。でも、自分にないものが求められる仕事に就いて、自分を開発していきたいという人は、いますね。
――いますよ。女の人には多いでしょう。人見知りだから接客業に就いてみるとかね。
うさぎ◆私は接客できないな。私だって人見知りなんですよ。
ひとみ♠そうなんですか・・・・・?
うさぎ◆いや、本当ですよ(笑)。こうやって人にお会いすることが増えたので、だいぶ慣れたんですよ。ま、信じて頂けなくても、けっこうなんですが(笑)。人見知りというのは、カッコつけたいという意識があるわけじゃないですか。
ひとみ♠失敗してはいけないとか、ヘンなふうに思われたくないとか。
うさぎ◆そうそう。それが、私はしょっぱい男と結婚してしまい、離婚して、その後、買い物依存症になったりして吹っ切れたところがあったんですよ。清水さんは、営業の仕事では殻が破れなかったけれど、ストリップのお仕事のほうでは殻は破れましたか?
ひとみ♠ずいぶん破れましたね。小さい頃、昼のメロドラマを見てたんですよ。
うさぎ◆ポーラ劇場?(笑)。
ひとみ♠そうそう(笑)。そこで男女が抱き合ってキスしたりすると、恥ずかしくて恥ずかしくて台所のテーブルの下に潜り込んでたんです。それが、気づいたらストリップ劇場に立って、いろんなことやっているわけじゃないないですか。すごーいと思って。
うさぎ◆うん、すごいですよ。「すごい」の意味が違うのか?(笑)

●性に対する意識

うさぎ◆初体験って、いつごろですか?
ひとみ♠中学生一年の後半くらい?
うさぎ◆早っ。昼メロで男女が抱き合っているだけで恥ずかしいのに、セックスはどうだったんですか?
ひとみ♠脚を開かれるのは、妙にはずかしかったですね。あれだけは、やめてほしかった。
うさぎ◆ハハハハ。中学一年で、もうセックスわかってましたか?
ひとみ♠なんとなく。学年で一人か二人は経験済みの子がいて。
うさぎ◆早っ。
ひとみ♠今は小学生らしいですよ。
うさぎ◆だって、清水さんは私より四歳下だから、そんなに変わらないでしょ。なんだ、この違和感は。あ、共学と女子校の違いか。私ね、女子校と男子校は廃止すべきだと思うんです!
ひとみ♠アハハハ。
うさぎ◆いや、本気ですよ。だって意味ないもん。隔離するほうが、歪むから。
ひとみ♠そうですね。
うさぎ◆女子校にはレズビアンが多かった分、同性愛に対する敷居が低くなったのはよかったですけど、その代わり、男の人に対する敷居がすごく高いんですよ。この年になっても、なんとなく男の人には引いてしまうところを引きずってて。
――初体験が中学生で、相手は同級生ですか?
ひとみ♠他校の先輩で、二つ上でした。
うさぎ◆好きだった?
ひとみ♠いえ。興味があっただけ。タバコを吸うのと同じです。大人からイケナイと怒られるようなことをして見たいでしょ。そういうところが子供ですよね。
うさぎ◆興味があったのはというのはわかるんですが、ポーラ奥様劇場を正視できなかった子が、興味だけでセックスできるんですかね。そうか、むしろ幼い頃から意識が高かったのかな。
ひとみ♠意識は高かったと思う。かなり自意識過剰。
うさぎ◆私は小学校の時にポーラ奥さま劇場を見てても、あまり意味がわかっていなかったですから。少女漫画を読むから、男と女が恋愛してキスしてっていうのはなんとなくわかっていたし、クラスで「あの男の子がカッコいい」っていうのもあったけど、それは恥ずかしいとは思わなかったし、憧れている感じでしたね。知らないから憧れてたんでしょうけど。
ひとみ♠そうかもしれませんね。
うさぎ◆セックスはお好きですか?
ひとみ♠当時は、イヤでイヤで仕方なかったです。初体験の少し前にオナニーを覚えて、オナニーの気持ちよさを知っていたので、セックスに絶望したんですよ。
うさぎ◆ああ、相手が中三じゃね。童貞に近いでしょ。入れるだけだもんね、気持ちよくはない。
ひとみ♠ええ。で、イヤなんだけど、一人前の女になるためには男とできないといけないと思って、何人かとしてみて。
うさぎ◆苦行ですか(笑)。セックスとオナニーが逆転することは?
ひとみ♠今は、違う次元でどちらもいい、っていうふうになっています。でも、セックスの良さがわかったのは、二十代の後半。
うさぎ◆もうストリップを始めた以降ですか。
ひとみ♠そうです。ストリップを始めた後、二年ほど不感症に陥ったことがあって。何をされても感じない、濡れない、入らなない、という。
うさぎ◆あらま。何歳ごろ?
ひとみ♠二十四、五歳でした。理由はわからないんですよ、未だに。
うさぎ◆オナニーもしなくて?
ひとみ♠オナニーはしてました。
うさぎ◆舞台の上でオナニーショーを始めたのって、ストリップをはじめた初めの頃からですか?
ひとみ♠そうです。ワケわかず始まって、一ヶ月くらい経ってから「本気でオナニーやってみなさい」ということで、そういうシーンを与えられたんです。「やってみろ」と言われても、できないと思ったんですが、お客さんの目が厳しく見えて、そこから必死にやり始めたんです。
うさぎ◆最初は服を脱ぐのも恥ずかしかったのに、オナニーしているところを見られるって、ショーだとしてもセックスしているところを見られるより恥ずかしいじゃないですか。セックスしているところを見られるなら共犯者がいるから、エクスキューズがあるじゃないですか。
ひとみ♠いえ、私が恥ずかしいと言ったのは、そういう恥ずかしさではなくて、演技をするのが恥ずかしいという延長線上だったんです。
うさぎ◆ああ、人前で何かをするということ、ですね。しかし、そんな時にオナニーをやれと言われたのか。
ひとみ♠男がいちばん見たいものだから、って言われました。オナニーショーを覚えると、お客さんのウケが違うんですよ。
うさぎ◆清水さんにはトレードマークみたいなものはあったんですか?
ひとみ♠オナニーショーだけかな。ずっと赤い長襦袢でした、旅回りはまったくしないで、ずっと道頓堀劇場にいたんです。二十日出て、十日休む、というかたちで。
うさぎ◆どうして旅をしなかったんですか?
ひとみ♠私の場合は、他の劇場がイヤなんですよ。お客さんが全然違うから。私はずっと、女の情念を芝居仕立てでやってて、決して見てて楽しくないんですよ。
うさぎ◆そうなんだ(笑)。
ひとみ♠最後のオープンショー(両脚を全開にして、性器をよく見せるショー)っていうのを、私はやってなかったんです。だから、他の劇場に行ったら、野次が飛んでくるだろうと思って、それがイヤだ。
うさぎ◆どうしてオープンショーをやらなかったんですか?
ひとみ♠劇場の方針です。私としては、見せた方が楽だったけど、チラリズムで通して。どうしても行かなければいけないことがあって、三、四ケ所は旅回りしましたけど。他の劇場に行くと、照明がダメなんですよ。舞台効果がまったくなくて。だから、私が行くときは、四トントラックに照明器具を積んでいくんです。私が旅に出ても、劇場としても儲けにならないんですよ。
うさぎ◆経費がいっぱいかかるのか。オナニーショーって、どのくらい本気でやるんですか?
ひとみ♠あれは、紙一重ですね。演技なのか本気なのかわからない、というくらいの。家で本気でやっているのとは違うんですが、精神的にはかなりイッています。本当にイクとは違うんだけど。
うさぎ◆見られることで興奮する、ということはあるんですか?
ひとみ♠うん。あと、見られている自分を、少し上から見ている自分がいるんですよ。のたうち回っている自分はM、上から見ている自分はS。
うさぎ◆家でやっている時は、上から見ている自分はいないわけですね。
ひとみ♠いないです。プライベートと仕事とは、別でした。できればプライベートのオナニーを劇場に持っていきたいと思ったけれど、やっぱり見せるのと自分でするのは違うな、と。
うさぎ◆むしろ、自分でするのは、地味かもしれないですよね。お客さんも、そんなに喜ばないかもしれない。
ひとみ♠うん、地味ですね。

●全身オマンコ

うさぎ◆不感症の時期を脱したのは、何がきっかけだったんですか?
ひとみ♠付き合っている男の人が変わったんです。すごく嬉しかったですね。EDが治った男性って、こんな感じかな、と思って。
うさぎ◆前の人とは長かったんですよ。
うさぎ◆気持ちが終わりかけていたとか。
ひとみ♠すごく義務感を感じてしまうので、セックスしておかないといけないと思ってしまって。感じないといけないと思うと、ドツボにはまっちゃって。
うさぎ◆今日も感じない、やっぱり濡れない、相手に悪いと、思えば思うほど感じなくなっちゃうんでしょうね。それはわかります。不感症以前と以降で、何か変わりましたか?
ひとみ♠どうだろうな。でも、年ともに、性感って変わりませんか?
うさぎ◆変わらないですよ~。よく、そう言うんですよね。感じ方が変わったり、感じる場所が変わったりって。どういうふうに?
ひとみ♠直接的に感じるようになりましたね。今ここで突かれている、この一部分が気持ちいい、とか。
うさぎ◆それまでは全体的に感じてた?
ひとみ♠ええ、若い時は、すごく感じると全身オマンコになったようにかんじたんですよね。そういうのないですか?
うさぎ◆全身オマンコ――――――っ?
――いま、うさぎさん、オマンコのかぶり物のイメージを持ったでしょう(笑)。違いますよ。
うさぎ◆うん、そう思った。違うの?
――どこを触られてもオマンコを触られているくらい感じている、というような比喩なんです。
ひとみ♠そうですよ(笑)。
うさぎ◆あー、ビックリした。ギャグかと思った。
ひとみ♠若い時って、したくてしたくてたまらない時って、なかったですか?
うさぎ◆! ! ! ! ええーっ、ないー!
ひとみ♠特に、大勢で焼き肉を食べてから一人で帰る時なんて、道端で男の人に声をかけてしまいそうなくらいで。かけたことはないけど。
うさぎ◆焼き肉は、よく聞きますね、私はそんなことは思ったこともないし、むしろ、お腹が弱いので、焼き肉食べて一時間くらいしてから激しい下痢に襲われたことがありますよ。焼き肉は、セックスとはほど遠いんですよ。
ひとみ♠何度かセックスしたくなって、気がつくとその日は焼き肉を食べていたので、結びついたんですよ。
うさぎ◆それ以来、焼き肉を食べに行くときは、したくなっちゃうことを心配しましたか?
ひとみ♠しましたねぇ。
うさぎ◆清水さんを口説くには焼き肉に連れていけばいい、と。そうですか、焼き肉ねぇ。
ひとみ♠そういう時って、オナニーじゃダメなんですよ、セックスしたいの?
うさぎ◆あっ、そうなんだ~。オナニーでは解消できないのではなくてセックスがしたいというのは、誰かと一緒にいたいという気持ち?
ひとみ♠いや、入れたい。
うさぎ◆挿入か。バイブではダメですか?
ひとみ♠どうなんだろう。仕事で何度か使ったことはありますが、普段は使わないので。
うさぎ◆バイブって、あまり普及していないんですかね?
ひとみ♠いえ、いますごいですよ。うちの劇場の前のアダルトショップなんですが、普通の若い子が買いに来ます。踊り子さんも、けっこうもってて、「今度出たのはいいよ」って情報交換してますし。
うさぎ◆バイブについては、私も思い出がありまして。
つい最近なんですが。もともとバイブは持っていなかったし、使おうと思ったこともなかったんですが、某女性作家が誕生日をホストクラブでやった時に、プレゼントですごく大きな「鬼待」というバイブを貰ったんですよ。

まぁネタですしね、ほんとうに巨大なので、使わないだろうと私は思ってたんですよ。ところが、彼女が「オナニーで使ってみたらあまりに良くてすぐにイッてしまった」とエッセイに書いたんですよ。本当に使ったんだ~! と驚きまして。

 彼女の何か月後かの私の誕生日に、また別のホストが、同じバイブの色違いをプレゼントしてくれて。私はピンクで、向こうは黄色かなかの、光のヤツなんですけど。でも基本的にはテレビの上に置かれたままで――ダスキンの人が我が家の掃除をしに来た時に何を思ったかもしれませんが(笑)――その頃に「あっという間にイッた」と読んだので、私は考えました。

私は性に前向きではないから鬱屈した人生を送っているんだから、ここはひとつ、充実したオナニーをしてみよう、道具を使う事には抵抗があること自体が既に性に対して前向きでないことの表れだと、と思ったんです。それで使ったんです。

ところがこれがまた、痛くてって入らないよと。だけど、これが入ってウネウネしてこそ、めくるめく快感が得られるようになると思い、痔の人がボラギノールを入れるノリで頑張ったんですが、ちっとも気持ちよくなくて。ほうほうの体とはこのことだよって感じました。

 その後、バイブをトイレで洗ってたら、電池を入れるところの蓋が取れて、電池が便器に落ちまして。このまま流したら詰まっちゃうと思い、泣く泣く便器に手を突っ込んで、拾ったんですよ(苦笑)。それ以来、使っていません。

ひとみ♠それはバイブのサイズが大き過ぎですよ、だったら、ローションを使うとか。ローションも、普通に使っている人がいるみたいですよ。
うさぎ◆それはプレイじゃないですか? ローションっていうのは、ホモが使うものだと思ってるんですが。
ひとみ♠でも、うちの踊り子さんでもお尻の穴に使うとかオナニーで使うとか、言ってる子はいますよ。
うさぎ◆ふぅん、そうなんだ。ローションなんて使わなくても、体液だけでなんとかなるかと思っていた。じゃ、年齢を重ねてきて、全身オマンコの感覚から、別の感覚になったわけですね。
ひとみ♠たぶんGスポットだと思うんですけど、膣から入って少し上のあたりをされると気持ちいいっていう、ポイントになってきましたね。
うさぎ◆どっちがいいですか?
ひとみ♠全身オマンコのほうが気持ちいい。
うさぎ◆あの頃に帰りたい?
ひとみ♠そうですね。
うさぎ◆全身オマンコって、精神的なものではないんですか?
ひとみ♠いえいえいえ。オマンコ肥大してウワーッと飲み込まれちゃったような感じ。
うさぎ◆・・・・・・・。
――今また、かぶり物を想像しているでしょ(笑)。
うさぎ◆うーん、好きな人とエッチしていることが嬉しい、という気持ちはないの?
ひとみ♠若い時は、好きじゃなくても気持ちよければ。
――若い時って、マンコがあまり鍛えられていないからじゃないかと思うんですよ。ただ突かれているだけで、クリトリスが感じているのでヴァギナが感じているのかわからないけど気持ちがよくてたまらない、って言う事なんだと思います。でも年とるとどこで感じているのかわかるようになりますからね。
うさぎ◆ええーっ! なんだろう、私に何が欠けているんだろう。

●さきイカ臭

うさぎ◆こないだ道頓堀劇場で踊り子さんのオマンコをみてて、きれいだなぁと思って。あれ、手入れはどうしているんですか?
ひとみ♠いえ、何もしていないですよ。毛は、みんな下の方はけっこう剃ってて、そこにライトが当たると綺麗なんです。でも、黒い子は黒いですよ。
うさぎ◆やっぱり局部の見た目も重要なんですか?
ひとみ♠ファンって不思議なもので、その女の子のオマンコは、自分の好きなオマンコにみえるらしいです。
うさぎ◆私はほんとはポラを取りたかったんですが、踊り子さんにイヤがられちゃうかな、と思って。
ひとみ♠うちの子は、ぜんぜん大丈夫ですよ。
――うさぎさんがポラを撮りたがった理由が違うんです。パイパンの踊り子さんが気に入ったと言うので、「ポラを撮らせてもらったら?」と言ったら、「でも毛が生えてないと、自分のと比べられない」って言って(笑)。
ひとみ♠ああ、なるほど。
うさぎ◆ポラを見てウヒヒと思うのではなくて、私のオマンコはもしかしたら見た目が・形状・性能すべてにおいて、人より劣っているのではないかというコンプレックスがあるんですが、だからといって、友達に「見せて」と言うわけにもいかず。万が一見せてもらったところで、後で自分のを見ても、「なんか違う気がする」と思うに決まっているので、その場で見比べる対象が欲しいんです。
ひとみ♠でもね、自分で見ると黒く見えます。上から見るから。
うさぎ◆自分で屈んでみるとですか?
ひとみ♠いえ、手鏡とか使って。
うさぎ◆ですよね。よかった、他の人は屈んで見えるのかと思った。
ひとみ♠上付きと下付きありますけどね。
うさぎ◆大体自分がどっちなのかもわかりませんよ。えつ、みんなわかっているものなの?
ひとみ♠どういう対位が楽かで、わかりますよ。座位が楽とか、バックが楽とか。
うさぎ◆ええっ、どうだろう。そんなこと考えたこともないな。あれ? えっ、みんな考えてるの? 体位は男の人がやりやすい方でやればいいと思っていた。基本的に、私は自分で動くのが好きじゃないんですよ。マグロのほうが楽じゃないですか。
ひとみ♠でも、騎乗上のほうが、自分の好きなように動けるから、好きなところに当てられるじゃないですか。
うさぎ◆でも、騎乗位だと鼻の穴を下から見られてしまうとか、そっちのほうに神経がいってしまって。でも、よく考えたら、正常位でも鼻の穴が見えるんだよね。どうして、みんなは集中できるんでしょう?
ひとみ♠私は照明は暗くしたいですよ。明るいと集中できない。感じている顔は作らないといけないのかしらって、いろんなことを考えてしまう。
うさぎ◆そうですよね。プチ整形でボトックス注射を打った時に、顔上半分が動かない時期があったんですよ。目尻のシワは消えたけど、シワ寄せとはよく言ったもので、瞼にシワ寄るようになっちゃって。普通の時なら寄らないけど、セックスする時にヘンなシワが寄って老けて見えるようになっちゃって。だから、セックスしている時に絶対にシワを寄せない事、ってのに気を遣いまくってて。
ひとみ♠それだと、気持ちよくないですね。
うさぎ◆そんなだから、全身オマンコになったこともないし、Gスポットもわからない。
ひとみ♠前戯で男の人に触ってもらうと、わかりませんか?
うさぎ◆うーん、指を入れてもらったことくらいあると思いますが、ここが気持ちよかったというような明確な記憶がないんですよ。挿入されている記憶はもちろんあって、あと、クンニリングスは嫌いなので、されるとイヤだな、という記憶はあるんです。
ひとみ♠え、じゃあどこが気持ちいいですか? よくクリトリス派と膣派がいるんですけど。
うさぎ◆クリトリスかな。でも、舐められるのはイヤ。マンコが臭かったらどうしよう、と思ってしまうし。
ひとみ♠でもね、普段は臭くないのに、突然臭くなることもありますよ。男の人のものを入れた後に出して、しゃぶる時に、なんか臭いんですよ。それは自分の匂いなんですよ。
うさぎ◆どんな匂いですか?
ひとみ♠イカっぽい。さきイカというか。発酵したような。
うさぎ◆さきイカの匂いについては、私にも体験がありますよ。
 修学旅行に行った時に、友達の部屋に遊びに行ってたんですよ。ガラッと開けたら、すごくさきイカの匂いがしたので、みんなが車座になってお喋りしているところに坐るやいなや「さきイカ、どこ?」って言ったんですよ。「食べてないよ」「匂いがするじゃないの、わたしの鼻はゴマかせないわよ」っていったら、しきりに目配せをされるんですよ。

で、廊下に連れていかれて、「臭い子がいるんだよ。たぶん生理だと思うんだ。誰もさきイカなんて食べていないの。その子の匂いなの」って言うんですよ。ああー、なんてことを言ってしまったんだ、ごめんなさい、と思いましたよ。そしてまた車座に戻った時には、カチンコチンで。でも、きっと本人は気づいていないんですよね。

ひとみ♠でも、自分の匂いはわかりますけどね。生理の時とか疲れている時とか、いつもと違う匂いがすると、体温が上がってきて、「ああ、今日はちょっと匂うな」とわかりますよ。
うさぎ◆そうですか。だけど、教室の扉を開けた瞬間に「誰かがさきイカを食べている」と思ったことはないですよ。修学旅行の時は部屋が狭かったというのもあるでしょうけど。
ひとみ♠だけど、その目配せした子たちも、女の子には臭いがあると知っているから、そういうことになったんでしょう。みんなも経験があるわけですよね。
うさぎ◆少なくとも当の本人は、知らないうちにさきイカ臭を漂わせているわけですよね。その後、長じるにつれ、生理の時だけでなくマンコが臭い人がいることを知るにつけ、私がそうなんじゃないかと思って。服を着ている間はそうでもないけど、いざセックスになってパンツを脱いだ瞬間に、ものすごいさきイカ臭がしたらどうしよう、って。
 「自己臭症」っていう心の病があるんだけど、私には深刻でもないにしても軽くそのケがあるんです。タクシーに乗っても、私が乗った途端に運転手がなんの気なしに窓を開けただけで、「私が臭いの?」って思っちゃうんですよ。あと、鼻をすすられるとダメなんです。思わない?
ひとみ♠思わないですね。
うさぎ◆なんでそんなに自信があるんですか?
ひとみ♠自信はないけど、人間どこかしら臭いでしょうと思っているので。
うさぎ◆私は、自分の嗅覚には自信がないですよ。普通だと思うんですが、母親の鼻がダメなんです。私が中学生に入ったころに、まったく嗅覚がダメになって。
ひとみ♠味付けができなくなりますね。
うさぎ◆そう、しょっぱくなったの。本人が一番気にしてて、家族に言うんですけど、近所の人には内緒にしてて。人からそう思われているんじゃないかという事にすごく自意識が働いている母親なので、私はそれを受け継いでいるんじゃないかと思うんですよね。

母親が鼻が利かないのは本当だけど、私の鼻が利かないのかどうかは不明で、だけど実は少し弱くて、強烈な匂いならわかるけど自分のことはわからないのかな、とか。ワキガの人も自分の匂いは分からないと言いますから、そういうことなのかなという不安を持っているんですよ。それもあって、セックスに縁遠いところがあって。
ひとみ♠男の人に聞いてみればいいじゃないですか?
――うさぎさんは聞いても、言われたことを信じないんですよ。
うさぎ◆小説でエッチなシーンが出て来るでしょ。いい女の象徴として「おまえのアソコから、すごくいい匂いがする」って書かれてると「世の中には花の匂いがする人がいるんだ」と思って、ますます後ろ向きになっていくんですよ。
ひとみ♠動物だから、性的な匂いに興奮するというのはあるでしょう。石鹼臭いよりは、体の匂いがしたほうがいい、っていう男の人はけっこういますよ。それは、動物のメスがオスを惹きつける匂いでしょ。
うさぎ◆フェロモンかぁ。いいことなのか。だけど、人間はね・・・・・・。
ひとみ♠人間も動物ですよ。私は好きな人の匂いだったら、わりと大丈夫ですよ。電車に乗った時の知らない人の匂いはダメですけど。
うさぎ◆あっ、匂いフェチの人っていますね。人が好まないような匂いに興奮するというのはあるでしょう。そういう人になればいいのかな。
――ここまでお話されてみて、うさぎさんはそうとう変わっていると思いませんか?
ひとみ♠囚われてますよね。
うさぎ◆どうすればいいですか?
ひとみ♠マンコの形が多少ヘンだろうが、匂いがきつかろうが、好きな人だったら受け入れるものだと思うんですけどね。逆に男の人を見た時に、多少チンチンが臭くても、エッチがヘタでも、我慢するじゃないですか。それと同じだと思います。
うさぎ◆なんかね、相手がなかなかイカなかったりすると、私のマンコがゆるいのかな、と思っちゃうんですよね。
ひとみ♠ああ、私もそういうふうに思うタイプです。
うさぎ◆そう思っちゃいますよね。
ひとみ♠だから、もっといろんな人としてみたほうがいいんですよ。
うさぎ◆ううっ。
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下記写真。膣挿入用具を使い避妊用具
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●流され続ける
うさぎ◆オナニークイーンと言われるほどまで昇りつめて、いま振り返るとどうですか?
ひとみ♠あの頃は使命感がありましたからね。辛かったですね。自分のショーがすごくてそう呼ばれるようになったわけではなくて、社会的背景というか、ちょうどそのころ新風営法が施行されてチラリズムのショーが始まったというのに乗ったかたちですから。
――清水さんは「トゥナイト」的なTV番組とも、うまくリンクされましたね。
ひとみ♠そうですね、深夜番組にはけっこう出させていただいて。だから、自分の実力で昇ったわけではないので。そのへんは冷めてますよ。
うさぎ◆そうかなぁ。いろんな意味で評価されているからこそ、テレビにも出たんだと思うけどな。今は演出一本で、舞台には上がりたいという気持ちはもうないですか?
ひとみ♠上がりたいは上がりたいです。やっぱり人に魅せたいですね。
うさぎ◆魅せたいんだ?
ひとみ♠うん。仕事の時はイヤなんだけど、「もう止める」って決めると、急にやりたくなる。気持ちいいんですよ、自分だけにみんなの視線が集まって、一体感があるんです。
うさぎ◆なるほど。辛いことがあって止めたいと思うけど、その気持ちよさを思うと、やっぱり続けようと思うんですね。本格的に止めたのは、いつですか?
ひとみ♠二年前の五月です。「引退興行をしよう」と言われて、でも「引退なんて一生しないよ」って言ってて。ステージに出なくても「引退」という二文字は一生使いたくない、生涯ストリッパーでいたいと思ったんですよ。ところが、「やろうよ」という事になって。そして、釈然としない思いのまま、当日が近づいて。
うさぎ◆まただ(笑)。最初のころはともかく、今やスターとなった人が、どうして劇場側の言いなりなんですか~。
ひとみ♠まあ、最後は自分でも区切りをつけたほうがいいなと思って。
うさぎ◆悲しかったですか?
ひとみ♠ぜんぜん。最後のステージは札幌道頓堀劇場でやったんですが、客席に頭が真っ白なおばあちゃんが座ってたんです。握手会の時に、「八十四歳なんです。息子がぜひあなたのショーを見ておいた方がいいと言うから、東京から来たの」っていってくれて。
うさぎ◆へえー、それは感動しちゃいますね。忘れられないステージってありますか?
ひとみ♠平成七年かな、渋谷道頓堀劇場が立ち退き問題で一回閉めたことがあって。自分がずっとやってきたところだから、劇場がなくなるなら心中をしてしょうって、最後のステージに出たんですよ。それまで辛い思いばかりでやってたのに、最後のステージはすごく楽しかったんです。

私はストリップが好きなんだ、ストリップてこんなに素晴らしいんだ、って気づいちゃったんですよ。そういう思いでやっていれば、もっともっとお客さんを楽しませてあげられたのに、と思って。だから、引退公演も楽しくできたんだと思います。
うさぎ◆今は演出のほうに移られて、これが清水ならではのステージだと心がけているものってありますか?
ひとみ♠ストリップは大衆のものでなくてはいけない、ということ。エンターティメントとしていいものを目指すけれど、高飛車なものではなくて庶民的なものでなくてはいけない、と思ってます。女の子たちにも「誠意を込めてやりなさい」って言っています。
うさぎ◆芸術性に走りがちなものであると思うんですが、お客さんをおいてっちゃって自己満足になってしまうとダメですよね、女の子のなかには、勘違いしちゃう人もいますか?
ひとみ♠そうですね。芝居や踊りの部分を一生懸命やって、ベッドのところをないがしろにしてしまったり。お客さんが一番楽しみにしているのは何処なのか、ってことですよね、あと、お客さんは女性の柔らかさを求めてきているのに、歯を食いしばって「いい芝居をしなくちゃ」になっていたり。それだと、楽しめないんですよ。踊りに懸命になるあまり、笑顔を忘れてしまったりね。
――これからもずっと演出をやっていきたいですか?
ひとみ♠やっていくでしょ、きっと。流されて(笑)。
うさぎ◆清水さんの「流されて」は、よくわからないよ(笑)。でも、流された結果が、いい方向に向いているんですものね。
ひとみ♠「流されて」とは言っても、選択はしているんでしょうね。
うさぎ◆絶対にやりたくないことはやらないしね。「やれ」と言った人も「止めろ」と言った人も同じ人ですか?
ひとみ♠そうです、社長です。
うさぎ◆ああ、社長さんには清水さんのことがいろいろちゃんとみえているんですね。じゃあ、大切な人に出会ったことになりますね。その方に出会えてよかったですね。
ひとみ♠いや、死ぬときにならないとわからないです(笑)。

つづく 中村うさぎ
まずは、自分の性的ファンタジーをとことん探す
ソリスト、オナニスト、テロリスト