現実的に、理想の相手と結婚できるケースは稀でしょう。仮にそうだと思ったとしても、じきに相手の嫌なところが見えてくるものですし、そこがよくて結婚を決めたはずの長所が、気に入らなくなってきたりもします。夫婦関係においては、数多くのすれ違い諍いが必ず起こります。「離婚」や「別居」という言葉が頭によぎったことのない夫婦は、あったとしても少ないはずです。

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離婚を選ぶ夫婦たち 藤田博康著

――いかに危機を乗り越えられるか

 現実的に、理想の相手と結婚できるケースは稀でしょう。仮にそうだと思ったとしても、じきに相手の嫌なところが見えてくるものですし、そこがよくて結婚を決めたはずの長所が、気に入らなくなってきたりもします。夫婦関係においては、数多くのすれ違い諍いが必ず起こります。「離婚」や「別居」という言葉が頭によぎったことのない夫婦は、あったとしても少ないはずです。その意味で、長い年月を配偶者とともに生きていく自体、大いなる自己実現のかたちであることは間違いないでしょう。

1 離婚に至る背景とその要因

1〇離婚の増加とその背景

 我が国の離婚は、平成14年の約29万組をピークにその後やや減少傾向にありますが、依然として高止まりで(厚生労働省 2013)、今や3組に1組近くの夫婦が離婚する時代になっています。また、それを裏付けるかのように、「相手に満足できないときには離婚すればいい」と考える男女は半数以上にのぼっています(内閣府 2009)。

 その背景として、女性の雇用機会の増大や社会保障制度の整備などによる経済的要因、「バツイチ」などの言葉に象徴されるような気軽な離婚観、子育て以降の時期の長期化などのライフスタイルの変化、「男は仕事、女は家事育児」といったかつての性役割分業に対する男女の意識の違いおよび女性の自立志向などがあります。昨今では、離婚はかつてのように忌避的な出来事ではなくなりつつあり、「不幸な結婚生活を続けることは夫婦にとってもちろん、子どもにとっても好ましいことではない」といった言説のもと、

積極的な生き方の選択肢の一つとして語られることが多くなってきました。とくに、フェミニスト的な立場からは、性的役割分業の男女の不均衡。婚姻関係における男性の未熟さや発達不全、そのための女性の満足度の低さなどが一様に指摘されており、親密でも対等でない夫婦関係の解消は悲劇ではなく、離婚は自己実現のための一つの有力な手段であるという論調もみられます。
確かに新聞の人生相談欄一つとっても、相も変わらず夫の異性関係、DV、実家との癒着等に悩む妻らの相談が後を絶ちません。

2〇離婚の迷い

 しかし、実際、離婚はそう簡単なことではありません。離婚を決断した人の大半が、挫折感や不安、絶望、抑うつ状態などの情緒的混乱を体験していますし、その後長い年月を経ても何らかの心理的・身体的症状を抱え続ける者が少なくありません。

 また、離婚によるひとり親家族は離婚前よりも経済的に苦しくなるケースがほとんどですし、さらに、子どもの心理面に与える影響は長期的で深刻であるということも示されています。そもそも、離婚そのものが穏やかになさることはむしろ例外的ですし、さまざまなしがらみや紛争が長引くこともあります。

だからこそ、なかなか離婚に踏み切れず、葛藤や苦悩を抱えながら長い期間を過ごしたり、心理的に隔たりのある相手とかたちだけの家族を維持したりというカップルが少なくありません。

 すなわち、離婚の危機にある夫婦は、それぞれが相手とともに暮らすことの苦痛と、離婚に伴う苦痛との強い回避――回避葛藤の最中にあるといえます。そのなかで人はどうして、どのように離婚を選んでゆくのか、その結果はどうであるのかなどについて、考えてみたいと思います。

3〇離婚の理由

 まず離婚の理由を統計でみてみましょう。司法統計年報によれば、家庭裁判所への調停離婚の申し立ての理由は、夫側1 性格が合わない、2 異性関係、3 家族親族と折り合いが悪い、4 異常性格 5 浪費する。
 妻側が1 性格が合わない、2 暴力を振るう、3 異性関係、4 精神的に虐待する、5 生活費を渡さない、となっています(最高裁判所 2012)

サイト筆者の見解
 夫側見解=妻側のいう1 性格が合わない―― 昔から或いは今でもあっても大概の理由は、性格が合わないではなく――夫側はセックスの欲望(数の問題)に妻側が応えない、満足させてくれない。さらに、妻から嫌悪感丸出しにされたら人格まで否定された気分になり、イラついてDV(暴力)に走るという事が多く習慣化する。妻側のいう2 暴力を振るう―に至る。或いは妻側のいう3 異性関係―も、夫の性的欲望を満たさないからという見方に由来する。妻側のいう4 精神的に虐待する、5 生活費を渡さない―夫からしたら妻を屈伏させ謝らせ、心から謝罪せよというメッセージと結婚生活満足度欠如への仕返しという意味あいが含まれると少なからず感じられるのである。

妻側見解=夫側のいう1 性格が合わない――結婚してみたら、夫は自己中でちっとも思いやりが感じられない。子育てと家事、親戚つき合い、もろもろで、疲れ切った私の身体を執拗に週に何回も求めて来る、優しさと思いやりなさに憤慨しているが、セックスは夫婦の義務と念頭に置いてあるものの、夫のセックスは自己中、ワンパターンで存在感を示さない小さいお〇んこ、性戯下手とくれば少しも満足感は得ないし、只々煩わしいだけで悪寒さえ覚え、ついにはセックス拒否に至る。
夫側の言い分2 異性関係―妻の気持ちは夫に男としての魅力がなければ魅力ある男に惹かれ不倫に至るは仕方ないし、人間(動物)的本能で、新しいパートナー探しも兼ねた行動である。夫側のいう=家族親族と折り合いが悪い、4 異常性格 5 浪費する=は、妻は心も体も破綻した状態なら当然の結果であろう。
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 このデータは、全離婚数の約一割にあたる調停離婚という特殊なものではありますが、ここからは、「性格が合わない」ということが大半の夫婦の離婚理由であり、「異性関係」が男女問わず高率で出現していることが明らかです。また、暴力や精神的に虐待などという妻側からの訴えからは、夫の支配的、自己中心的な振る舞いが離婚を招いているという見方や、「家族親戚との折り合いが悪い」という夫側からの訴えからは、旧来の性役割分業に根ざした夫と妻の対等でない関係のありようが影響していといった解釈も可能でしょう。

この点、夫が妻の意見を聞き入れない夫婦は、そうでない夫婦より4倍も離婚率が高いといった報告あり、男性の婚姻関係における「発達不全」といった問題は確かにあるとおもいます。

 ただし、実際に家裁離婚ケースや夫婦カウンセリングケースに関与してみると、妻のほうが夫よりもはるかに勢いが強く、支配的に振る舞ったり、感情的でまったくとりつくしまがなかったり、異性関係から子どもや家族を顧みなくなったり、暴力を振るい夫がそれに耐えているなどというケースも決して稀ではありません。

この点、離婚ケースにかぎれば、男性は必ずしも女性に優位する存在ではないとの見方もあります。そもそも、夫は妻からの DVとか精神的虐待などといった訴えはあまりせず、その分「性格が合わない」とか「異常性格」などといった主張が多くなりますから、この表面にあがった理由だけで夫婦の関係性や問題の本質を見立てるのは危険でもあります。

4〇さまざまな要因が相互関連するプロセスと離婚

 とくに、紛争性が高い家事調停における離婚理由は、相手を説得しやり込め、自分の気持ちを定めるための主張や訴えとして、ジェンダー等の観点をふまえて効果的に勅裁に語られます。しかし、離婚の理由は決して一つの原因に帰することはできません。離婚はすべからく、さまざまな要因が相互に影響し合っている一連のプロセスです。

 現代は多くの男女が「精神的な安らぎの場を」を結婚に求めますが、その期待がうまくかなわず、いわば「甘え」のこじれが、悪循環的にコミュニケーションを悪化させ、「異性関係」や「暴力」、「精神的虐待」などといったことを招いてしまうようなことがしばしばあります。また、そこにはそれぞれの原家族から持ち越してきた未解決の問題や、性格的要因、社会的風潮などさまざまな事柄が輻輳(ふくそう「ものが一か所に寄りあっ集まってくること」)的に絡んできます。

結婚の継続に踏みとどまるためにも、離婚を決断するためにも、離婚後の人生の再構築のためにも、そして、離婚・夫婦問題に介入する専門家も含めて、さまざまな要因が絡みあって離婚に至ることをしっかりわきまえている必要があります。逆に、一つのスローガン的な言い分を前面に押し出しての離婚は、そのような「現実」を覆い隠してしまいがちでその後の新たな再出発への適応に苦しむことになる可能性が高まります。

キーワード、夫婦関係に生じるプロセス、夫婦間のすれ違い、長続きする夫婦、夫婦のコミュニケーションの悪循環、結婚生活への期待と蜜月期、甘えたい、依存したい、情緒的ケア、夫婦二者関係の拗れ
 つづく 離婚への分かれ道