私は、恋の始まりいで会いたくてたまらないって興奮してい るときでも、頭のどこかで「ケッ」て笑ってる自分がいます。コ トに及んでいる最中でさえ、どこかで「笑っちゃうよねー、その 格好」いつかは必ずこの興奮状態は正常値に戻るときがくる 。早く元に戻りたいって思う。夢うつつな状態が物凄く恥ずか しいんですよ。あとで思い起こせば懐かしいこともあるけどね 本表紙 阿川佐和子 大石 静共著トップ画像

第1章 結婚ってなに?

赤バラオンナの奥義 無敵のオバサンになるための33の扉

はじめに
 大石静さんとの対談本をつくろうと言い出したのは、私である。
 これまで大石さんとはインタビュー、鼎談(ていだん)、食事会、テレビ番組などで何度となくお逢いしているが、会う度に大いなる刺激を受けて帰ってきた。ふむふむ、そういう発想があつたか。なるほどこれぞ女の覚悟というものね。その勇猛かつ斬新な、まっしぐらにしてユーモア溢れる言葉の数々に、私は何度も大笑いし、そしてしみじみと勇気を与えられたものである。 

 最初に刺激を受けたのは、氏の初めての連載エッセイのタイトルだ。『わたしってブスだったの?』(文春文庫)と、そんな自虐的に通しタイトルをつけるシナリオライターとは、いったいどんな人だろう? 驚愕した。驚愕しつつ、毎週、「週刊文春」に掲載されるエッセイの小気味の良さに心洗われる思いがした。当時、私も同じ雑誌で連載エッセイを綴っていたが、大石さんほどの勇気と独創力に欠け、どうも劣勢に甘んじておるぞと自ら感じ始めた頃、私はその雑誌から「エッセイの連載はおしまいにしましょう」との引導を渡される。「負けた・・・・・」という敗北感と同時に、「敵わない」と内心で白旗を掲げた。


 さて、実物の大石さんにお会いしたのはそれから数年後のことである。エッセイの連載をクビになったかわりに、私は同誌にてインタビューの連載を始めた。その187回のゲストとして大石さんにお出ましいただいたのである。

 当日は脚本家の苦労話やドラマ誕生までの経緯、夫婦生活に至るまで多岐にわたって伺ったが、なかでも印象に残っているのは、「卵かけご飯」のエピソードであった。ちょうど大石さんはNHKドラマ『ふたりっ子』のシナリオを書いていて高視聴率を記録していた時期である。

「去年は365日、1日も休まず仕事をしたんです。それまで、週に1回くらいは、夫に料理を作っていたんだけれど、それもやらなくなって。自分の分は卵かけご飯に海苔くらいで、それも気持ちが落ち着かないから、立ったまま食べちゃうって感じでしたよ」

 リズミカルで溌剌(はつらつ)とした大石さんの声を聞きながら、私はその姿を頭の中で想像した。冷蔵庫から卵を一つ取り上げてドアを閉める。一方で炊飯ジャーのご飯をお碗(わん)に盛り、冷たい卵を勢いよく割ってその上にかける。箸をもち、醬油をタラタラッとたらし、卵とご飯を速やかにかき混ぜ、立ったまま、お碗を口に近づけ、ズズズッと、かつ上品に掻き込む。口の中にてしばし咀嚼(そしゃく)し、それから空になったお碗を見つめ、流しでささつと洗うと、そばにあるタオルで手を拭き、そしてまた、そそくさと仕事場へ戻る。その動きのなんという潔さかな。見たことはありませんけれど。

 私は原稿が書けないとき、ご飯をゆっくりつくる余裕がないとき、でもお腹が空いて何かを食べたいと思うとき、必ずと言っていいほどに、この映像を頭に浮かべた。そして、
「そうだ、玉子かけご飯!」
 ウキウキと冷蔵庫の扉を開けるのである。
 大石さんのおかげで私は何度、救われたことだろう。

 本書のための対談を通して、私は改めて、大石さんの果敢な生き方に感服した。もちろん何もかもに共鳴できるわけではない。いくら感服しても、明日から真似して実践しようとは思わないこともいくつかあった。たとえば、大石さんほど下着の色を各色揃えるというような意欲はないし、どれほど更年期障害がつらくても、子宮を取っちゃおうなんて発想は、思い浮かばないし実行する気にもならない。でも、大石さんの数々の「大事なこと」に耳を傾けるうち、私は確信したのである。

 年を取るって、まんざら悪いことばかりじゃないと。
 ピチピチした若い肌に嫉妬して、過ぎ去りし日々に未練たらたら思いを馳(は)せ、憂(うれ)い嘆き、嘆息しつつ、だからといってしょぼくれようという気はさらさらない。曲げた腰を伸ばし、胸を張り、「よし!」と自ら号令をかけるや、気づいたときは、前に向かって歩き出している。

それだけではない。新たな美しきもの、面白いできごと、やりがいのある難問を目ざとく見つけるや、獲物を見つけたピューマのごとくキラリと目を光らせまっすぐ対象物に向かい突進する。それこそが大石流の大人の生き方なのである。

 大人になるためには、万事において落ちつくこと。そういう人もいるだろう。大人になるということは、年齢相応の分を弁えることが必要だ。そう説く人もいるだろう。しかし私は必ずしもそうとは思わない。

 年齢を重ねた年月分、経験を積んでいるのは確かである。前にも同じような痛みを受けたけれど、あの時とどうやら似ている。初体験よりは多少、落ち着いて対処する力を備えているかもしれない。しかし、経験を積んでいるから人間が出来ているとは限らない。年寄りがおしなべて立派な人間ばかりであったなら、今の世の中、こんなトンチンカンなことは起こらないはずである。むしろ私は、どれほど年を重ねても、「まだ驚くことはいっぱいあるぞ」とあらゆる方向に子供のような好奇心と、その感情につられて生まれる大人げない行動力を持っている人が好きである。

 大石さんはそんな人である。そして私は、大石さんを見るにつけ、「まだ驚くことは尽きない!」と驚いて、大石さんの後をついて行く決心を新たにするのである。

 本書を読んで、いい歳の大人のオンナが呆れたもんだと思われる向きのもございましょうが、どうか一つ、笑って呆れて、ついでに「歳を取るって、それもありなのね」と安堵していただければ、幸いに存じます。
 では、大石さんの仰天発言の数々を(私は普通です)存分にお楽しみくださいませ。

第1章 結婚ってなに?

アガワはなぜ、還暦すぎて入籍したのか

大石 半年以上たちましたが(2017年5月9日電撃結婚!)、改めてご結婚おめでとうございます。どうですか、新婚生活は。
阿川 ありがとうございます。そこからいきますか、やっぱり。
大石 そりゃそうですよ。世間の皆さまが今一番知りたいのはそこですから。ただ、どうしてもひとつ、最初に聞きたいことがあるんです。
阿川 はい、なんでしょう。
大石 なぜ、なにゆえに、ご入籍なさったの?
阿川 いや―、それは‥‥・。
大石 びっくりすると同時にちょっとがっかりしたのよ、私。あの阿川さんが結婚しちゃったのか! なんだ普通っぽいな、って(笑)。
阿川 田嶋陽子さんにも「なんで結婚なんてしちゃったの?」と言われました。
大石 ある意味、世の独身女性の希望の星だったのに、突然の結婚発表なんて、裏切られたわ― って女性もたくさんいたと思うのですよ。私も長い間結婚しているけれど、結婚ってやってみるとつまんないし‥‥。
阿川 そりゃ、やった人はそう言えるだろうけれど、やってみないとわかないもの。
とはいえ、私自身まさか63歳で苗字が変わるとは思ってもいませんでした。「週刊文春」(2017年5月25日号)の手記にも経緯を書きましたが、3年前「週刊新潮」でツーショットを撮られたとき、父は入院中、母を介護中で、正直それどころじゃなかったんです。幸い、純愛などと書いていただいて、案外、好意的な記事だったんですが。
 で、油断していたら2016年の秋に「フラッシュ」でふたりとも直撃取材を受けて、「阿川佐和子、
結婚!」と騒がれまして。ただ、そのときは父の喪は辛うじて明けていたんですが、16年2月にオジサンの母上が亡くなられたので、アチラは喪中だったんです。そけで、周囲からは「喪が明けたら結婚するの?」とさんざん聞かされていたし、母の介護関係の用事をオジサンに頼めば、施設の方から「あの方はどういうご関係?」と聞かれ、とにかくその都度、説明が必要になってきて・・・。
大石 本当にうるさいわね、世間って。ところで、「オジサン」って呼んでいるのね、ご主人のこと。
阿川 なんと呼んだらいいのか、わからなくて(笑)。普段は「お父さん」とか、ふたりだけのときは名前を呼んだりとかしてますけどね。まぁとにかくですね、それまでもふたりで出かけたら「どういうご関係?」と
いう視線は感じていましたし、それをいちいち「結婚はしていないけれど、ちゃんとしたパートナーです」
と釈明するのもおかしいし。それで、完全にふたりの喪が明けたら動かないと思っていたら、たまたま脚本家の中園ミホさんが「行動するなら5月よ!」とおっしゃってくださったもんで。
大石 中園さんは元プロの占い師ですからね。彼女が言うなら間違いないわ。
阿川 そんな流れでございます、入籍したのは。
大石 「夫です」「主人です」って紹介出来るとやっぱり楽なのね。
阿川 当人たちは何も変わっていないんだけどね。ただ、入籍したというニュースが流れた後、「本当によかったわねぇ、おめでとうございます」とたくさんの方から言われて、入籍とはこんなにも周囲を安心させるものかと痛感いたしました。だってそれ以前は、オジサンと歩いていて誰かに会うと、なんともいえない微妙な緊張感が走るのを感じていたので。
大石 世間の空気というか、世の中の対応が変わるというのはあるのでしょうね。みんな、私みたいに根掘り葉掘り聞かないからね(笑)。

新婚生活は「聞かない力」が大事

大石 苗字が変わると何かと面倒じゃないですか? こんなに長い間「阿川佐和子」で仕事してきたのに。
阿川 運転免許証や住民票、銀行口座、病院の診察券。ひととおり手続きをしましたが、意外と時間がとられますよね。なんで妻だけがこんな目に遭わなきゃいけないんだと、今更ながら皆さまがお怒りになる理由がわかった。
大石 フフフ。新妻っぽい。
阿川 そんなふうに私がひとりでカッカしていると、ウチのオジサン、「面白い顔だね」とか「縦ジワ、縦ジワ~」と囁きながら後ろを通っていくんです。眉間のシワや尖っている口のシワなどを見て。
大石 お見事ね。そのかわし具合。飄々(ひょうひょう)として。
阿川 締切前、切羽詰まって私がパソコンを打っていると、オジサンはリビングで数独をやっている。ところが、リビングにあるファックスにゲラが届いて、「あ、これも読まなきゃいけなかった!」とそのまま私がリビングでファックスを読み始めると、スーッといなくなって書斎でゴルフのパターを練習していたりする。
大石 仕事の邪魔をしないように気を遣ってらっしゃるのね。
阿川 というより、私のイライラ熱を浴びないための回避策でしょうね。あと1時間以内に原稿を送らなきゃいけないってときに話しかけられても「ちょっと今!(集中したい)」と言うと、「は―い」と去っていく。
大石 普通の旦那様ならカチンとくるところかもしれないわね。うちの夫も、私の仕事が佳境(かきょう)だなと察すると「ただいま」も言わずに静か~にしています。物書きの妻をもった夫の宿命ですね。
阿川 気の強いオンナとくっついた男の性(さが)なんでしょうか。老齢のなせる技というか。
大石 ケンカはしないの?
阿川 しますよ。でも基本的には私がキンキン言ってカッカしているのを、オジサンは嵐が過ぎ去るのを静かに待っている感じ。言い争いにはならないですね。「もう、何度も言ったのにどうして聞いてないの?」と騒いだときには、「聞かない力・・・・」ってボソって呟いたのがおかしくて、怒っているのがバカバカしくなったことがあります。
大石 素敵ねぇ。阿川さんの扱い慣れていらっしゃる。
阿川 情緒が安定しているところは本当に尊敬します。なんせ私は、瞬間湯沸かし器のような短気かつ男尊女卑の権化(ごんげ)みたいな父のもとで育っていますから。父の場合、「出かけるぞ」と言ってから5分でも待たせようものなら、「どれだけ俺を待たせる気だ!」と怒鳴り散らすところを、オジサンは10分経っても平然と待っている。忘れた頃にさり気なく仕返ししてきたりはしますけど、不愉快を顔に出すことはめったにない。あと、すっと重い荷物を持ってくれたり、歩道のない道を歩くときは自然と車側を歩いてくれるとか、そういう小さなことに私は驚いちゃうし、ありがたいです。だってそれまで、されたことがなかったから。

長続きの秘訣は食べ物と笑いのツボ

長続きの秘訣は食べ物と笑いのツボ
大石 お父様は結局お会いにならなかったのよね、彼と。
阿川 例の「週刊新潮」に記事が出た時、母には介護の都合上すでに紹介はしていたんですが、入院中の父にはどうしたもんかなと思っていて、あの性格ですし、いろいろ面倒な点があるかなと。幸いに父はその記事を見ていないようで、ほっとしていたら数か月後、父から電話があって「ちょっとプライベートな話がしたい」と。
大石 数か月後か。お父様、きっとずっと気にされていたのね。
阿川 いや、誰かが記事のことを話したんでしょうね、その電話で父が「付き合っている人がいると聞いたけれども、どうなんだ?」聞いてきて、慌てて「はい、います。一応独身なんですが、一度ちゃんと挨拶に行かなきゃいけないなとおもっていたんですけど」と言い訳っぽく言ったら「その必要はない」とぴしゃり。
大石 ふーん‥‥。
阿川 ただ、その後に「それでおまえは今、幸せなのか」と聞かれて、「はい、幸せです」と答えたら「お前が幸せならそれでいい」と、ガチャンと電話を切られました。以降、何度も病院に行きましたけど、一度もその話は出ませんでしたね、息を引き取るまで一度も。嫌だったのかな、その話題が。わかんないけど(笑)。
大石 父ゴコロね。でも、娘が幸せだと言うのが聞けたからホッとしたんじゃないかしら。お母様とはどうなの?
阿川 母はもの忘れがだいぶ進んでいますが、私が仕事で帰りが遅くなるときは母と一緒に食事をしてくれたり、送迎が必要な時はやってくれたりします。だから母は「よく見かける人」「親切な人」「優しい人」なんて言っていますから、ケアマネジャーか誰かだと思ってんじゃないかな。かと思えば、週刊誌で撮られた後にオジサンに会った時は「あらあなた、雑誌に載っていたわね」って言ったらしい(笑)。
大石 えーっ! お母様、面白い。入籍のご報告はなさったの?
阿川 家族の食事会で結婚の報告もしたんですが、曖昧なんじゃないかなぁ。弟が「佐和子は結婚したんだよ」と言うと「結婚? びっくりした。誰と?」というやりとりをずっと繰り返しているの。ただ、なんとなくこの人が旦那さんと思っている感じがありますね。一度だけ、「あなた、旦那様でしょ?」とオジサンに問いかけていたことがあります。
大石 旦那様がお母様とふたりでご飯を食べてくれたりなんて、なかなかできることじゃないわよ。
阿川 「あなた何年生まれ?」「昭和23年です」「お若いのねぇ」「うーん、そうでもないかな」なんていう母とオジサンのやりとりを聞いていると、有難いなと思います。もの忘れが進んだ母は何度も同じ会話を繰り返すんだけれども、ある日オジサンが「コツがわかった。こっちからどんどん話題を変えて話していけば、繰り返しが減るよ」って。

時空を超えた愛
大石 お人柄ももちろんいいけれど、阿川さんのことを大切に思っていることがよくわかる。わりに長いお付き合いなのよね?
阿川 初めて会ったのは28歳の時です。テレビの仕事でエッセイを書く仕事を始めた30代、アメリカに渡った40代直前のころと、途中、途切れた時期もありましたが、文章やパソコンのことで相談に乗ってもらっていました。オジサンは、大学で外国人に日本語の指導をしたり、パソコンに詳しかったりしたので、頼りがいあったのは事実。あと、これは当時も今もあまり変わりませんが、仕事で失敗したり批判されたりして「もうこんな仕事むかない、やめたい」と私がヤケを起こすたび「期待されることは有難いことだし、続けたほうがいい」となだめてくれるから、助かる。
大石 阿川さんの性格を熟知されているのね。
阿川 出会ったときはご家族がいらっしゃったし、この話題が週刊誌やテレビで取り上げられたときは、離婚していたとはいえ相手のご家族に迷惑がかかることが、とにかく心配だ。
大石 そうよね。でも、私は前世とかあまり信じないけれど、前世からきっと縁があったふたりなのよ。男女の関係なん当事者にしかわからないし、婚外の恋であろうとも、どうしようもない想いもあるわけで。梅沢富男さんが「時空を超えた愛」とおっしゃったのも分かる気がする。
阿川 私は、大石さんもお察しの通り、わがままで小心者、お調子者かつ父に似て短気でイラチな性格だから。安定した情緒で我慢してくれる能力はすごいなと感謝しておりますです。
大石 うちも結婚して40年、流れている空気だけで、お互いに疲れてるな、機嫌が悪いなって会話もせずともパッとわかっちゃうところはあるかな。思えばもう親よりも長く一緒にいるわけでかなり歴史があるから。なんだかんだ言っても馴染んでいるというか、楽というか。細かく言えば、食べ物の相当とか笑いのツボとかが似ているのよ。
阿川 この間、冷蔵庫のジャムの表面ちょっとカビていて、私は見つからないようにササッとカビの部分を取り除いて出したんですよ。それごときで捨てちゃうのは、もったいないじゃない。
大石 モノがないって言われて育った世代らしいわ。私もカビ取って食べちゃう派。
阿川 そしたらオジサン、しっかり目撃したらしいんですよ。以来ときどき冷蔵庫をあけては「これはカビの実験のために置いてあるのかな?」って言ってます。
大石 その言い方おかしい(笑)。

妻の料理がまずかったら?

阿川 週刊誌に撮られたとき、オジサンのことを「S氏」と書いてあったんだけど、その後しばらくは洗濯ものを干しながら「S。氏、家事にいそしむ」、お皿を洗いながら「S氏、皿を洗う」とぶつぶつ
大石 センスある!
阿川 「このタオル、ボロボロだから新しいのに替えとくから」と言えば、「おまえが幸せならそれでいい」。「今日のお昼は、昨夜の残り物でいい?」「おまえが幸せならそれで・・・・」っていちいち。しばらく言っていたな。
大石 (爆笑)。いい、ユーモアのセンスが抜群。ドラマに使いたいくらい。
阿川 テレビで『バイキング』だったかな、東国原英夫さんがゲストのときに、アガワの結婚問題について「いや、でもその男性は羨ましいですよ。家に帰ったら阿川佐和子がいるんですよ。幸せじゃないですか」って言ったらしいの。お世辞だろうけどね。それからしばらくは、私が「ただいま」と帰ってくると「阿川佐和子が家に帰ってくる幸せ」とか、逆に今夜は家に帰るのが遅くなるって言うと、「家に帰っても阿川佐和子がいない不幸せ」とかね。言ってきますけど、全部、受け狙いですよ、これ!
大石 面白すぎる、ダーリン。
阿川 基本的には口数が少ないし、社交的でもないんですけど、たまにボソッと言うセリフがおかしくて。頭の回転が速いですね。なんだったか忘れましたけど、私が作る料理でオジサンがあまり好んでいないものがあるんです。それを出すと「これもう一生分食った」と。
大石 「まずい」といわないところがすごく上手。「もう食べたくない」じゃ身も蓋もないところを、「一生分食べた」か。これもドラマのセリフに使えるな。

趣味が2倍
阿川 食事の趣味で言うと、オジサンは目玉焼き派で私はスクランブル派。仕方なく目玉焼きを作った時、卵を入れて水を入れてジュッと蓋をするじゃない? そしたら「上に白い膜が張るのが嫌いだ」って・・・・・。
大石 うちの夫も同じ。だから蓋を開けっ放しで焼くんだけど、男性に多いのかしら。
阿川 それで焼き上がって黒コショウをかけたら、「白コショウが好き」だと。頭にきて「なんでここまで趣味が違う人を好きになったのかわからない」って言ったら、「趣味が2倍に増えていいんじゃない」って言ったのね。
大石 阿川さんが好きになったの、なんとなくわかってきた。でも、今の話だと、食事は毎回阿川さんがつくってるの?
阿川 私が作って家でご飯を食べるのは週に2、5日くらいかな。
大石 なかなかリアルな数字ね、2、5日って、私は1日から1・5日くらいだからすごいわ。
阿川 たいして変わらないじゃないですか(笑)。基本的には外食ですけれど、お昼をきちんと食べたい人なんですよ。朝ご飯を食べたばっかりなのに「昼、どうする?」ってよく聞いてくる。
 私が原稿を書いている時なんかは、ラーメンをつくってくれます。インスタントのアレンジですけど。もやしがのっていたりしてけっこう上手。大石さんのところは?
大石 うちは手が空いている方が家事をやるんだけど、今は夫がヒマだから、基本は夫がやっています。ただ、毎日必ず「今日はご飯、どうする?」と確認してくる。
阿川 愛されているじゃないですか。
大石 ふたりぶんかひとりぶんかを確認したいだけだと思う。買い物のこともあるんじゃない? 必要なものリストを書いておくと、買っておいてくれるから。
阿川 うちのオジサンはですね、たまに買っておいてほしいものをメモで渡すと、こーんなにたくさん買ってくるんです。たとえば、「トマトとマヨネーズと青菜」だとしたら、「トマトは普通のフルーツトマトと小さいとか」「マヨネーズはカロリー控えめの普通のやつ」「青菜は小松菜とほうれん草と春菊を買った」って、なぜか2、3個ずつ買ってくる。で、「そんなにたくさんいらないでしょう!」と私が怒る。
大石 リスクヘッジなのかしら(笑)。うちの夫はね、ご飯を冷凍するとき、80グラムだか70グラムだか、全部グラムできっちり計ってきれいに冷凍するの。
阿川 えーっ! うちのオジサンもきっちりと四角にしてラップに包むけれど、そこまで几帳面じゃない。

クリーニング店にあるようなアイロン台を
大石 たしか2つで普通の一善分になる計算かな。一杯半食べたい、半分だけ食べたいってときに便利だからって言っていたような・・・・。同じ量のご飯がピーッと美しく冷蔵庫に並んでる。
阿川 すっごい! 私なんていつも適当にガバッと包むから「どうしてそんなに雑なんだ」と叱られます。
大石 そんなキレイに並べてヒマだなって思うけど(笑)。洗濯ものも、ビシッとキレイに下着まできっちり畳んでくれます。アイロンも私より上手。ヨタったタオルは、これまたキレイにミシンでダーツと雑巾にしてある。あるときミシンを買い替えたいって言って。ずいぶん立派なミシンがやってきたの。ミシン屋さんが私に一生懸命使い方を説明するんだけど、「使うのはこちらです」って夫を指さしたら「え?」って。
阿川 アハハハ。うちも、アイロンは圧倒的にオジソンが担当ですけど、私はアイロン台が場所をとるのが嫌で、小さい板型のを使っていたんです。「アイロン台買っていい?」と聞いてきたかと思ったら、こんなロボットみたいな大きな台がやってきて。
大石 やだ、うちも同じ! バカデカい、クリーニング店にあるようなものを買ってきた。
阿川 そうそう、ガチャン、ガン、ガチャーン! っていう折り畳み式の。あれにはびっくりしました。

男は”ぱなし”族と心得よ

阿川 一緒に暮らして驚いたのが、”ぱなし”が多いこと。電気つけぱなし、置きっぱなし、ドアは開けっ放し、出しっぱなし。
大石 いかなる男もそうじゃない? うちも”ぱなし”族。
阿川 長らく「トイレ蓋戦争」ってのが続いてね。トイレの蓋を閉じたい。でもアチラはいつも開けておきたい。最初は「またー」って怒ってたんですが、まあ、一緒に生活をするってこういうことかと最近はあまり気にならなくなってきました。開いているのを見つけたら、黙って私が閉められるようになってきた。でも、オジサンはオジサンで私が「なぜトイレの蓋をいちいち閉じるのか」「なんで資料や本を床に置くのか、理解できない」とブツブツ言っていますけどね。
大石 やっぱりまだ新婚ぽっいな、やりとりが(笑)。
阿川 そりゃあ、結婚40年の先輩に比べれば‥‥。ところが大石さんは、外食の際支払いってどうしています?
大石 うちは夫とはめったに一緒にご飯に行かないけれど、行った時は夫が財布から出すように仕向ける。それ私のお金じゃんって内心思いつつも(笑)。私なんて特に、ナチュラルにしてると威張っちゃうから、意識的に一歩下がっているふうにして、夫を立てる。そのほうが世間的にみんな楽でしょう、きっと。
阿川 そうなんですよね。でも、あとで割り勘にするんですけどね。
大石 割り勘?
阿川 といっても本当に適当なんですけど。オジサンは家計簿をパソコンでつけていて、最終的に帳尻を合わせたいらしいんでいす(笑)。日記もずっとパソコンで書いていて、「ゴルフ始めたのいっだっけ?」「~さんに会ったのはいつだっけ?」とか聞くと、さっと検索していついつとか教えてくれる。
大石 ある意味便利ね。
阿川 そうそう、記録係なの。日記は暇の時にまとめて書いているらしいんですが、私が急に仕事が長引いて晩御飯を一緒に食べられなくなったとき、うちの秘書に何を食べようか相談したらしいのね。秘書が焼き肉やお寿司を勧めたら、「ちょっと胃が重いけどイタリアンに行く」と。相談した癖に。で、理由を聞いたら「もう日記に書いちゃったから」って(笑)。
大石 阿川さんとイタリアンに行くつもりで日記に書いちゃったのね。日記を書き直す発想はないのかしら? 40年も前だけど、私も結婚した当初は細かいところが一々違うので、毎日驚いていましたよ。でも、そんなのは慣れてしまえば全然問題ないし、それよりも、仕事に理解があるとか、面白がるポイントが一緒とか、結婚ってそういうことのほうがずっと大事ですよね。

「恩義」「面白い」「飽きない」の法則
阿川 結婚されてから、おおきな問題ってありました?
大石 夫は東北出身なんだけど、郷里はかなり男尊女卑な文化で。夫は違うんですけど田舎がね。特に私はたまにしか帰らないから生意気な嫁と不評でした。舅のお葬式のときも仕事があってなんとか段取りをつけて夕方に行ったら、もう酒盛りが始まっていて、夫が「静もここに来て食べなさい。呑みなさい」って言うからそのままテーブルに直行したら「あの嫁は来るなり、手伝いもせずにご飯を食べて酒を呑んでいる」ってすっごく怒られて。別の時は白いセーターとアイボリーのスカートを穿いて普通に歩いていただけなのに「上から下まで白い服を着て、しゃなりしゃなり歩いてよ―。まったく東京のおなごはよ―」って悪口を言われたり。
阿川 コワーイ。泣いたりしなかったの?
大石 夫が味方してくれたから、泣くようなことはなかったです。そいう意味でいえば、夫はどんな私でも受け入れてくれるという自信はあったかも・・・・ですね。
阿川 絶大なる信頼関係で結ばれてるんだー。
大石 でも実は、結婚して最初の10年くらいは、一緒に暮らしていながら洋服や本棚、食器や料理道具まで、「私の分」「夫の分」と、きっちり分けていたの。
阿川 えええーっ? なぜ?
大石 お互い、すぐに離婚しそうな予感があったから。10年過ぎた頃にやっと、お互いのものをぐちゃぐちゃにした。特に理由はないんだけど。
阿川 そうなってからも、離婚しようと思ったことはあるんですか。
大石 あるあるある。今でも昨日でも一昨日も(笑)。なんて言うのかしら、見るのもイヤになってちゃうときがあるわ。基本、夫のことは好きなのよ。会話も楽しいし、いないと寂しい。だけど、若い時のスラッとしたキレのいい感じが今はまるでないんですもの。それが時々猛然とイヤ。
阿川 歳は取るもんだし、お互いさまでしょう、若かりし頃のご主人の姿に、よほど郷愁があるの?
大石 そうかも。夫の仕事が一番いい時代に結婚してしまったので。ただのお爺さんになった今との落差が埋められなくて。ある程度歳をとった夫婦はみんなそう思ってるんじゃないかしら?

「台所に立っている君には感動しない」
阿川 爺さんになってから、どんどん好きになるということはないんですか。
大石 うちの場合はないです。
阿川 そんなにきっぱり。
大石 若い頃の夫の写真が出て来た時には愕然としたもの。「こんなステキだったのに、今のあの人、もう、いらな―い!」って叫びそうになる。
阿川 ひどい‥‥。
大石 ひどいわね。自分で言ってて、ひどいと思いました。歴史は残酷ですね。経済的にも、私が養ってもらっていた時代があって、お互いが対等に稼いでいた時代があって、今は私が夫を養っているという感じ。いろんな時代があるから、そのとき稼げる者が稼げればいいと思っていますけれど。
阿川 素敵な関係だなあ。
大石 でも、今はパワーがないし精彩がないの。それが寂しくて嫌なの、きっと。
阿川 夫に精彩を求めるか?
大石 私の場合はね。
阿川 とカナとか言いながら、今も結婚生活を続けている理由はなんですか?
大石 「恩義」があるから。その一言に尽きます。
阿川 恩義?
大石 私は20代でガンを患って最初の手術をした後、いつ再発するか分からない状況で結婚したの。再発の危険と隣り合わせな上に仕事も低迷中で「自分は世界一不幸だ」と思っていた。女優になりたかったけれどチャンスは全然なくて、同い年の女優が朝ドラのヒロインをやってるのを見てはメソメソして、クサクサして、心が壊れそうだった。
阿川 意外―。
大石 そんな私に夫が言ったの、「ここでただ泣いていても誰にも気づかれない。小さくても自分で劇団を作るとか、アクションを起こさないと人の目にはとまらない。君は女優になりたいんだろう? 行動を起こせ」。当時は新作を書いて上演しないと注目されない時代だったから「じゃ、自分で自分に役を与えるつもりで脚本を書こう」と思いついたわけ。
阿川 なるほど、自分の役の本を自分で書く。
大石 でも、劇団なんてひとりじゃできっこない。そう言ったら、「同じような落ちこぼれと組めばいい。とにかく旗を揚げろ、一歩前に出ろ」と夫が言うの。
阿川 旦那様、カッコいいじゃないですかー
大石 「でも、家事もあるし・・・・」とまだグジャグジャ言ってたら「今日からうちのことは一切やらなくていい。やりたいことだけやりなさい。台所に立っている君には感動しない。やりたいことをやっている君の方が絶対すてきだ」って。東北人だけどちょっとイタリア人みたいでしょう?
阿川 働く女性にとって、理想の夫ですな。
大石 それで決心がついて、同じ女優になりたかったけれど落ちこぼれの演劇人だった永井愛さんと組んで、劇団「二兎社(にとしゃ)を作ったんです。

離婚をやめた理由

阿川 もしかして、生まれが卯年だから「二兎社」?
大石 そう。ふたりだけの劇団で交互に戯曲を書いて主役をやることにしたの。脚本を書いたこともなければ書くことの怖さも知らなかった。今思うとそれがよかったのかもしれません。永井愛さんはその後、劇作家として高く評価され、とるべき賞はすべて取り、劇作家協会の会長まで登り詰め、今や演劇界の重鎮です。
阿川 それまで一度も書いたことのなかった人が!?
大石 うん。旗揚げ公演は立ち見もいれて50人ぐらいの小さな小屋だったけれど、スタッフは一流。当時舞台監督だった夫が、照明や美術の一流スタッフを連れてきてくれたからです。本物のプロフェッショナルに支えられて、素人の私たちも注目されるきっかけになりました。
阿川 もう、ダーリンにチュッチュッ、ギュウしなきゃダメですよ。
大石 「やりたいことに向かって生きなきゃダメだ」と言ってくれたこと、これがすべてですね。でないと、今の私はいなんですから。
阿川 大石さんのことを深く理解していらしたんですね。
大石 でも、旗揚げ前はなぜか夫とギクシャクしていたのです、もう離婚しようかと。
阿川 え、そうなの?
大石 話し合って離婚届を書いて、いざ提出っていうときにガンが再発して即入院。当時夫は舞台の仕事でものすごく忙しかったんだけど、毎日一生懸命看病に来てくれた。私のパンツを干している姿をみて「この人を失わない方がいいかな」ってしみじみ思ってしまい、それで離婚は取りやめ。
阿川 旦那さん、本当に素晴らしい人だなあ。
大石 その後よ、放射線治療や自宅療養をしながら鬱々(うつうつ)としている時に、夫が「やりたいようにやれ、世間が何と言おうとも、自分の人生だ」と言ってくれたのは。
阿川 こう言っちゃうとなんですが、大切な奥さんの余命があとどれくらいか不安、だったら好きなことをやらせてあげたい、という気持ちもあったのかも?
大石 夫はときどき遠い目をして言っている、「儚い命の嫁をもらったと思っていたけど・・・・」って。
阿川 「ずいぶんと長生きね」って(笑)。
大石 でも、夫は当時それなりにモテたみたいで、儚い命の嫁がいながら裏で、適当に女性と付き合ったりしてはいました(笑)。
阿川 あ、そうなの? 証拠はつかんでたんですか。
大石 だいたいわかるよ。ただ、遊び感覚の浮気っぽかったから別にいいかなって。当時、私はオペラのキュー出しのアルバイトをしてたんだけど、夫とたまたま一緒の仕事になったことがあったの。夫は舞台監督でしょう。コーラスの女の子の中に気に入った子がいて、50人くらいいるコーラス隊の前で、その子に「君だけに」ってお菓子を渡したりするのよ。照明室から私はその様子を見てて、「へえーこうやって口説くのか」と観察してた。
阿川 舞台監督に「君だけに」なんて言われたら、新人はコロリと落ちるな。
大石 次の日には女の子が、夫のことを目で追っているのがわかるのよ。私は旧姓で仕事をしていたから夫婦だって気づかれなくて。
阿川 けっこうプレイボーイだったんですね。
大石 私も好きな人が出来ると一直線で、夫に目がいかなくなる。それを見た夫は「いつまで生きているか分からない儚い命だから、好きな人がいるなら好きにすればいい」と。

出会って一ヵ月で入籍
阿川 しかし、オープンなご夫婦ですな。そもそも、なんで結婚したんですか。
大石 なんで結婚したかは、よくわからない。当時の私は、夫の前に付き合っていた既婚男性と不毛な恋愛をしていたから、次に付き合った人とは絶対結婚するんだって念じていたの。あっちももうそろそろ結婚かなって思っていた時期だったんでしょう。出会って一週間で結婚を決め、一ヵ月で入籍してしまいました。夫はあの頃もイキイキ仕事をしていたし、評価もされていたし、背が高かったし‥‥、でも今はとにかく恩義だけ。この恩義はとてつもなく深い、それとやっぱり、阿川さんの旦那様と同じで、夫も面白いことをポロッと言うのよ。お互い演劇の世界でやって来たから、芝居を見た感想もなるほどと思うし、お互いに飽きないのかもしれないわね。
阿川 恩義、面白い、飽きない。加えて背が高いところ、か。
大石 うまくいく結婚の法則のようなものが見えて来るでしょう?
阿川 見えて来るか?

夫以外の人を好きになったから

大石 あるとき、私が婚外恋愛で夢中になった相手が独身で、「結婚してくれ」って言うから「お父さん、結婚してくれって言われちゃった。どっちが好きかって言えば今はあっちが好きかも。またちょっと離婚したいかも」って相談したら「君がそっちへ行きたいんならしょうがない。いいよ」ってすぐ回答がきた。
阿川 それって、結婚してどれくらい経ったころ?
大石 10年ぐらいかな。「好きなことをやりなさい」と言われてから7年後。それで、そのとき初めて三者面談をしたの。夫と、その「結婚してくれ」男と、私とで。
阿川 えええっ? つまり、離婚調停という段階ですか?
大石 いや、先ずは夫が彼に「この人を大事にしてやってくださいよ」と・・・・。
阿川 ちょっと待って。それ、大石さんは納得してたんですか?
大石 それで収まればいいか、くらいに思ってた。別れても夫きっといい友人でいてくれるだろうし、イヤになったら戻って来ても許してくれそうだなと(笑)。
阿川 なんと図々しいー 戻るつもりだったんかいー
大石 でも、そのときの私と夫のやりとりを見て、付き合っていた彼が「すいません、今のままでいいです」って言ったのよ。こっちとしては「ハアー?」みたいになっちゃって。
阿川 怖気(おじけ)づいたんですかね?
大石 「どういうこと? うちの夫は一緒になりなさいって言っているのよー」って詰め寄ったら「自信がなくなった」って。
阿川 夫婦の間にスキが見えなかったんじゃないの? どうせなら元旦那とは思いっ切り憎しみ合って別れてほしいって思っていたんですよ、その若者は。
大石 その後も私は彼が好きで別れられなかったんだけど、だんだん暴力を振るうようになって別れちゃった。夫が「暴力を振るのだけはやめてもらいたい」って彼に言いに行ってくれたんだけどね。
阿川 保護者かー
大石 彼に殴られて顔が貼れたとき、夫が医者に連れ行ってくれたのね。そしたら担当の医師が夫をすごく睨んだの。夫は「僕じゃない」と弁明して、私も慌てて「この人じゃないんです」って説明して。帰り道、申し訳ないな、やっぱり夫の方がいいなってしみじみ思ったの。
阿川 そもそも、旦那以外の男の、どこがそんなによかったんですか。
大石 ・・・・エッチが・・・・・・。
阿川 ああ。
大石 だから、なかなか別れられなかったの。だけど暴力はねぇ。
阿川 よく、エッチしても心さえ奪われなければいいって言う人もいるけれど、やっぱりこれはすごく大きな問題じゃないかと思うんですけど。旦那様は、妻が若い男と四六時中エッチしているという事については、どう思っていらしたんでしょう?
大石 夫は今でいう草食系男子。女の子と仲良くなっていくプロセスが好きなタイプ。ねちっこくないっていうか、エッチもスルスルーって終わって本を読んでいるみたいな感じ。そしたら、私の価値観を揺るがすような男が登場して・・・・。
阿川 燃え滾(たぎ)っちゃったんですか。
大石 まあね・・・・・25歳で結婚して30歳ぐらいから夫とはほとんどセックスレスだったし。「僕が力不足だからね」って認めてたもの。でもね、不思議なことに、婚外の男と過ごした後って、すぐに家に帰りたくなるの、さっさと身支度しちゃう。早く家に帰って、夫とワインでも飲んだ方が楽しいなって。
阿川 後ろめたさはないんですか?
大石 三者面談して以降は後ろめたさゼロになっちゃった。図々しいわね、すみません。
阿川 それにしても不思議なご夫婦ですね。絶妙なバランスが保たれているような。
大石 いろいろありましたが、なんとなく今も暮らしてます。

何年たっても「中身より見た目」
阿川 結局、夫婦って、結婚って、何ですかね。
大石 長い時間かけて育んでいくものじゃないかしら。って、どの口がそれを言う(笑)。
阿川 まったくだ―
大石 他人同士がくっついて家族になって、いろんなことを乗り越えて、一緒に歳をとるって感じかしら。
阿川 継続は力なり。ですか。
大石 夫婦によって抱えている問題はさまざまだけど、たとえばうちの場合だった、「稼ぐ」ことに関してはお互い変なプライドがなかったのは大きかったかな。その時代、その時代で、稼げるほうが稼げればいいと。あとは何度も言うけれど「恩義」。夫は、私の人生を左右する言葉をくれた人だから、感謝よりももっともっと深いの。それと、夫はやっぱり私のタイプ。
阿川 たとえ今は精彩を欠いていても?
大石 そうね、相当衰えたけど・・・・・でも、毎日顔を突き合わすでしょ。よく中身が大切なんて言うけれど、見た目がどうにもこうにもダメな相手とは、どんなに中身がよくってもうまくいかないわよ。
阿川 紆余曲折40年夫婦が言うんだから、妙な説得力がありますが。

第2章 オバサンの「恋愛論」

真実の愛は論理を超える

阿川 大石さん、今は恋をしているんですか?
大石 仮にしているとしても簡単には語れないわ。もう年だし、一応、夫がいる身ですから。
阿川 前章ではあれだけ赤裸々に語ったくせに。
大石 昔話だもん。そもそも、正しい恋愛なんてないと思いません? 最近の不倫報道にはちょっと違和感がありますね。殺人犯みたいに叩くでしょう。保守的で、すごく恐ろしい世の中になっています。
阿川 思うに、ドラマや小説、映画では、不倫ものだったりやるせない恋の物語だったりを、みんな感動しながら見るわけでしょう? あと、ずっと昔にさんざん不倫してきた人は、いっのまにか「人生の達人」と尊敬されるようになったりもする。なのに現実の、しかも現在進行形の不倫は、めちゃくちゃ非難されますよね。この矛盾はなんだろうね。
大石 私がドラマ『セカンドバージン』を書いた時にもそうでした。ふたりの恋に感情移入してくださる視聴者がいる一方で、「NHKなのに、なんで不倫ドラマなんかやるんだ」「大石静は不倫ものばかり書く」「あいつが書く物は行儀が悪い」って、そりゃあもう、散々な言われようで。
阿川 でも、視聴率はすごくよかったんでしょ? 『失楽園』ブームもそうでしたが、視聴者って、表向きは道徳的な人間でいたいけれど、心の中では反道徳的なことに憧れるっていう複雑な心理なんでしょうか。
大石 もちろん家族に迷惑をかけない方がいい。でも、やむなき思いというのもまたあって。誰かが誰を好きになる、その出会いの順番が狂ってどうしょうもなく好きになっちゃたったことは、世間がいいとか悪いとか騒ぐことじゃないと思います。きっと人は、自分ができないことをやってのける人を嫌悪するのね。自分が憧れていることなら、なおさら。
阿川 そうかあー
大石 その恋愛が正しいかどうかは、当事者が決めること。もしかしたら当事者だって決められないかもしれない。だから周囲がとやかく言う事じゃないと思います。真実はいつだって論理とか常識とかの向こう側にある。私は脚本を書くとき、常にそのことを念頭に置いています。ラブストリーでもホームドラマでもサスペンスでも医療ものでも、それをきちんと描きたいと。ところで阿川さん。もう、何かなんだか分らなくなるくらい溺れまくるような恋、したことがある? ご主人との出会いの前に。
阿川 ない、わけではない(笑)。
大石 よかった。ホッとした。それくらいベロベロ、フニャフニャになって溶けちゃうほどの恋って、やっぱり命を息づかせるために必要よね。
阿川 そんな、ナメクジみたいに(笑)。確かに若かりし頃は、恋い焦がれている人の手が、自分の肩とか背中とかチラッと触れただけで、「・・・・・んあああん」って身悶えて、とろけそうになったことが、あるね。まさにナメクジ。やだ、思いだしちゃった。

フラれてよかったと思うとき、

大石 初めてキスしたときは「キスした―」って事実だけで一ヶ月は生きられた。何も食べなくても。
阿川 それ、いつの話ですか?
大石 17歳、高校2年だった。仲間とスキーに行ったとき。
阿川 ホームセンターや。リフトの上で?
大石 夜、買い物に行く途中、吹雪の中で。その後はもう大変よ。食事してもお手洗いに行ってもスキーをしていても、「キスした、キスした、キスした、キスした・・・・」って、頭はそのことでいっぱい。東京に帰って来ても、その記憶だけで生きていた感じ。「こんな映画のようなことが私の人生の中で起こるなんて」と映画のヒロイン気分でした。
阿川 私はキスした、キスした、キスした、キスしたぞう―。
大石 その人とは1年くらい付き合ったんだけど、フラれたの。いつまでたっても友達に紹介してくれなくって。女って若い時ほど公にしてもらいたいじゃない? しびれを切らして「私のこと、友達に紹介してほしい」っていったら、「僕は静のことをかわいいと思うけど、一般的に見て静はブスだから、友達に紹介したくない」って言われたのよ。
阿川 ええ? ひどすぎる―
大石 自分がブスの方に分類されるっていう事実に衝撃を受けたんだけど、その後いろいろあって、ボロ雑巾のように捨てられるまでずっと彼にしがみついてた。
阿川 そんなに好きだったんですか!?
大石 最初の恋だし、発情期だったのではないかしら? のめり込んじゃうとプライドも何もないのよ。ストーカーみたいに、彼の家の前まで行ったり駅で待ち伏せしたり。最後に会ったときの彼の顔、今でも覚えている。呆れたような憐れんでいるような。そのときやっと「ああ、もう私のこと本当に嫌いなんだ。好きじゃないんだ」ってわかって吹っ切れた。今振り返れば、そんなに執着するような人でもなかったんだけど(笑)。

「青い空、白い雲に、コカ・コーラ」みたいな人
阿川 そうなんですよね。一度吹っ切れてしまうと、なんであんなヤツに夢中になっていたのか分かんなくなるほどさっぱりしちゃうのね、オンナって。
大石 その彼は、青い空、白い雲に、コカ・コーラー みたいな人。スキーが上手で、すらりとして慶応ボーイでかっこよくて。もう、絵に描いたような爽やかさ。まぶしかったわ。本当は私とは最も合わないタイプだったのに、気付かなかったわね、あの時は。
阿川 スポーツマンでハンサム、好青年のロバート・レッドフォードと、外見は超美人ってわけないけど志の高いバーブラ・ストライサンドの大恋愛のようなものかしら。映画『追憶』の。
大石 あの映画、いい映画だったわね。私の映画ベスト10に入っているわ。30歳を過ぎた頃かな、その彼と表参道のあたりでバッタリ会ったの。サラリーマンになっていて「今度、ご飯でも食べようよ」ってご馳走してもらった。
阿川 運命の再会。まさに映画『追憶』そのままの展開ですな。
大石 当時私は脚本家になりたての頃で、「静は何を喜びとして、毎日を過ごしているのか?」みたいなことを質問されたのよ。
阿川 なんだろう。・・・・「恋愛」?
大石 「評価」って答えたのよ、とっさに。当時劇団をやっていたから、どれだけのお客が来てくれるのか、私の書いた戯曲がどう評価されるか。テレビの脚本も1,2本は書いてたから、その反響とか。そういう意味で「仕事の評価」って答えたら、彼、黙り込んじゃった。
阿川 その答えの何がダメだったの?
大石 彼いわく、「再会してから、僕は静と久しぶりに会う事だけを楽しみに、毎日つまんない仕事もこなした。当然、静も、”元カレと会うのを楽しみに今週もがんばった”と言ってくれると思っていた、その程度の答えを期待して聞いたのに、”仕事の評価”とは・・・・。そういう女になったのかと思って怯んじゃったよ」と。
阿川 なーにを今さら。
大石 ビビるほどのこともないのに、何言ってるんだろうって思ったな。やっぱり合わなかったんだと納得できたけど、歳をとってもカッコいいと思ったわよ、見た目はね。
阿川 そういえば、私も似たような経験があります。20代のころ、お見合いのひとつとでも言うんでしょうか、ある新進気鋭の建築家をご紹介いただいたことがあって。建築関係にちょっと憧れていたの、その頃。
大石 建築家の恋人、いい響き。

話のつまない男はダメ
阿川 一度ふたりで食事をしたんだったかなあ。その後、「うちでパーティがあるから、今度ぜひ」って誘われて。やった―、これでご両親にも紹介される段階に来たのかしらって、気後れしながらもお洒落してその人のお宅に伺ったんです。そしたら物凄くモダンな家で、ご家族も知的な人たちばかりで、外国人もたくさんいて・・・・私にとっては別世界― ぽわーとなっちゃって、「ここの嫁になったら素敵だろうな」なんて妄想を膨らませていすたら、コロッとフラれたんですよ。
大石 お付き合いしていたのに?
阿川 いや、一回お食事してホームパーティに行っただけなのに、おうちに呼ばれてからガールフレンドとして認知されたんだと、こちらが勝手に思い込んだだけで。あちらは「まだ結婚する気もないし・・・」みたいな感じで、なんとなくフラれたの。私はずーっとその人のこと、素敵って思っていたんです。その後、その方の噂を聞いたり、活躍されている話を聞いても、ずっとね。もしあの人の妻になっていたら・・・・なんて。付き合ってもいないくせに、かなり長く引きずっていたの。
大石 若い頃は、自分と全く違う世界の人って憧れるよね。
阿川 ずいぶんと経ってから、あるシンポジュウムで司会役の依頼があって、よく見たら。その憧れの君が、パネラーの一人にいるではありませんか―
大石 再会しちゃうのよね、何故か。
阿川 彼はもう結婚してお子様もいらっしゃいましたけどね。当時私は「週刊文春」のインタビューも始めてたのかな。でも実際にシンポジュウムが始まったら・・・・、その人、なんだかつまんない事しか言わないの(笑)。そのとき、あー、フラれてよかったと、さっぱりスッキリしちゃった。
大石 話がつまんない男はダメよね。
阿川 それに「この人つまんない」と思っている自分にもビックした。大石さんの元カレの話じゃないけれど、昔は私も見た目とかセンスの良さとか、そういう外見重視のオンナでしたからね。でも、歳を重ねるにつれ、そういう要素はどんどんどうでもよくなってくるのね。もう全然面食いじゃないもん。でも、背が高い人が好きな傾向は、まだ残っているかな。
大石 私も大きい人が好き。小さいからね、私たち。150センチコンビ。
阿川 背が高いだけでプラス20点ぐらいになりますよね。少々話がつまんなくても、
大石 ちなみに夫は185センチあったのよ。今はもう縮んじゃったから182センチくらいになってるらしいんだけど。
阿川 これは生物学的欲求だからしょうがないですよ。小さい動物は大きな動物と合体して、種のバランスを保とうとするのが自然の摂理だそうですから。

今も昔も面食い
大石 確かに、夫は小さい人が好きみたい。「モデルみたいにスラッとした女には何も感じない」って。今日も「阿川さんと対談? いいなあ。カワイイよなぁ。阿川さん」って、たいそう羨ましがっておりました。
阿川 有難きお言葉。私も150センチを切りました。歳を取ると縮むようです(笑)。
大石 よく考えたら私、今も昔も面食い、きれいな人が好きだな。
阿川 大学時代の青い空、白い雲のコカ・コーラ君ね。
大石 他にあれこれ。やっぱり長く一緒にいるためには、見た目がどうにもこうにも好きな相手じゃないとダメよ。また言っちゃった、同じこと。
阿川 懲りないのね。

アガワ流「とんがらし的恋愛術」

阿川 ちなみに、恋愛で学んだことってありますか。
大石 人の気持ちは移ろいやすいということかな。最初の恋のとき、当時はストーカーという言葉はまだなかったけれど、彼の気持ちが完全に冷めているのがわかっても「どこがいけないの? いけないところは全部直すから」って追っかけ回していた。だけど、男の人ってそういうのすごく嫌うじゃない? 男の人は面倒くさがらせてはいけないってことにも気づいた。
阿川 面倒くさがらせないで付き合うってどういうことですか。
大石 こちらの愛を訴え過ぎないこと、若い頃は、自分の頭の中に湧き上がった感情を全部相手に伝えたいし、伝えた方がいいと信じてた。でもそれって鬱陶しい。特に私は愛を出しっ放しにしたらすごいことになっちゃうから・・・・。
阿川 愛の出しっ放しー 水道じゃないだから。
大石 だから、歳を重ねて愛をセーブする訓練をしたわけ。相手が求めているときだけパッと出すように。むやみやたらと手紙を書いて、今ならメールを書いて思いを表現するのは、極力控えるとか。
阿川 それはわかります。恋はゲームだっていうのは、私も18、19歳のころに悟った。こっちがノッたら、あっちはソるし、あっちがノッてきたときは、こっちがソるんだな、これが。ノルソル法則ってのを、友達とよく話した覚えがある。そう言う駆け引きをどういうタイミングでするかが難しいねえとか、それが恋には大事なのかもって、語り合いましたよ。
大石 嫉妬し過ぎてもいけないけど、ちょっとはしなきゃいけないし。
阿川 そうそう。嫉妬はちょっと必要だもんね。
大石 とい言いつつ私は、好きになっちゃうと最終的に駆け引きとかどうでもよくなっちゃう。もう破滅してもいい。私のほうを向いて、私のやり方についてくればいいの― って。
阿川 激しいなぁ、もう。
大石 今はそうじゃないわよ。60歳を過ぎるとそんなやり方素敵じゃないし。自分も破滅してもいいし相手も破滅さしてやるっていう情熱はもうないな。女性ホルモンも減ってきていますから(笑)。

恋愛のピークで死にたい
阿川 大石さんは、恋愛のどんなときが一番好きですか。
大石 互いの想いが一番ピークのときにプチッと命も終わりたい、といつも思ったわ。彼に抱きしめられた瞬間、もうこのまま命が終わってほしい・・・・と切に。
阿川 ぜんっ―ぜん、思わない。
大石 とことん好きになると、交通事故とかで相手が死なないかな、と本気で思う。
阿川 なんで― 死んだら悲しくないですか? 恋愛のピークの瞬間に相手が亡くなれば、最高の状態でその恋愛を記憶にとどめておけるってこと?
大石 というより、その瞬間だけを味わい尽くしたいっていうことかな。この先別れて苦しい思いをするより、お互いの想いがピークのときにプチッと終わる方が素敵じゃないかと。小説『失楽園』のラスト、ふたりは交わりながらワインで毒をあおるでしょう? 両方とも離婚してきれいな身になって、やっと結婚できる状況なのに死を選ぶ。つまり一番絶頂のときに死ぬのよ。すっごく共感するわ。
阿川 要するに、この人と一緒にいるときが幸せという感情は、相手のみならず、自分もいずれ冷めるだろうことを知っているからですか?
大石 そうかもしれない。始まったものは必ず終わりがあるから、命と一緒で。
阿川 私は、恋の始まりいで会いたくてたまらないって興奮しているときでも、頭のどこかで「ケッ」て笑ってる自分がいます。コトに及んでいる最中でさえ、どこかで「笑っちゃうよねー、その格好」いつかは必ずこの興奮状態は正常値に戻るときがくる。早く元に戻りたいって思う。夢うつつな状態が物凄く恥ずかしいんですよ。あとで思い起こせば懐かしいこともあるけどね。
大石 そうね。ちょっと年齢が上がってからの恋はどこか気恥ずかしい。どんなに燃えていても、ププッというところは確かにある。
阿川 相手がロマンチックなセリフを言って来ても「うれしいわ」と思う一方で、「バッカじゃないの?」と毒づく自分もいたりする。
大石 そう思いながらプチッと終わると素敵じゃない?
阿川 イヤだあ、まだ死にたくないよ。だけど、「バッカじゃないの?」って思いながら徐々に徐々に気持の温度が下がっていって、ゆるやかに安定剤みたいなところに入っていく感じは好きですよ。冷めたともまた違う、ちょうどいい温度になってくプロセスは。

明日の恋もとんがらし
大石 その安定剤みたいなあたりが、阿川さんにとって心地いいわけ?
阿川 なかなかいいものだと思うけど。その中で時々ピリッと、とんがらし的な刺激が蘇るっていうのも、また嬉しいし。
大石「とんがらし的刺激」か。いいわね、ドラマのセリフに使おう、メモメモ。
阿川 情熱的に愛し合う「ピーク的刺激」と違って、安定感の中にある「とんがらし的刺激」って、それはそれで快楽だと思うけどな。ピークがずっと続くと落ち着かなくて「今、おかしいよ、佐和子、おかしいよ」ってもう一人の自分が囁くの。だから、安定の中の一瞬の刺激なら安心できる。
大石 ふーん。私たち、ぜんぜん違うわね。それにしても「とんがらし恋愛」、いい響き。「明日の恋もとんがらし」ってタイトルのドラマ、どう?
阿川 一体どんな話になるんだ?

つづく 第3章 「家族」とは?
 男と対等に生きるか、亭主を支えるか